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しつこさと負けん気は紙一重
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「もう一回だ」
「ハルト………早く飯食わないと込んじゃうだろ」
「もう一回だ!」
「二回言ってもダメ!」
昼時で混雑する人通りの多い道を歩いていたが、ゲームセンターに入る前とは並ぶ順番が違っている。
主導権を握っていたハルトが駄々をこねて、駄々をこねていたシュウが主導権を握って、ハルトを引っ張って行っている。
よほどシュウにカーレースで負けたのが悔しいのだろう。
あの後結構な差で敗北を味わったハルト自ら再戦を申し込み、やっと遊んでくれたと喜んだシュウだったが、何度も何度も同じコースを縦横して飽きが回ってきた。
ハルトはというと、あのシュウに苦渋を舐めさせられたのがどうしても気に食わない。
こんな運転ゲームごときでムキになるのは自分でもらしくないと思っているが、どんなに理由を積み上げたところで彼の自尊心は立ち直ってくれない。
シュウをコテンパンに泣かすことが、彼の望む結末だ。
それを成し遂げるためにどれだけうざがられようがひかないつもりでもある。
「ハンバーガーでいい?俺、あんまり金ないんだよね」
案にもうゲームする財産は使い果たした、と伝えてみる。
敏いハルトは目を吊り上げたが「俺が払う」と苦々しい奢り発言をした。
そこまで負けを覆したいのか。
シュウは呆れた息を吐いて近づいてきたファーストフード店の看板を見上げた。
「おいお前何かチート使ってるのか?」
「使うわけないだろ!俺にもプライドってもんはあるんだ!フライドポテトだけにな!」
「ひねるぞ」
黄金色のポテトを何本も口に含んでいるシュウに、冷たい一瞥を送る。
熱々、と舌を軽く火傷しているようだがその痛みすら美味だと言いきっている分、救えない阿呆だ。
ハルトは胸の中にくすぶる敗北の重みを隅に押しやり、手元のシェイクを啜る。
甘すぎてぐっとのどが鳴った。
「昼からどーする?俺もうゲーセンはしばらくいいや」
「勝ち逃げする気か。そうはさせない」
「なんでもいいからもう勘弁して本当に!」
口の中のポテトをかみ砕き、流し込むようにジュースを啜るシュウに、ハルトは渋々頷いてやった。
「わかった。この決着はまたの機会に持ち越してやる」
「何回しても負ける気しねーけどな」
「言ってろ馬鹿が。いつか泣かしひねる」
「前から気になってたけど何をひねるつもりなの?」
ハンバーガーに齧りついて美味しそうに咀嚼するシュウ。ハルトは時々フライドポテトをつまみながらずっとシュウを見つめている。
正確にはシュウの立派なアホ毛を。
「捻るじゃなくて、引きちぎるか」
訂正するハルトの呟きは群衆の騒ぎ声にかき消される。
残念ながらその意図は伝わらずに食事は終わった。
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