アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
泣きっ面に降る
-
「で?何で俺を呼び出した」
蒸し暑い外気温から隔離された図書館の内部から、不機嫌な声音が聞こえてくる。
想像通り呼び出されたハルトの機嫌はもちろん良いはずがなく、張本人であるシュウにきついまなざしを投げかけた。
射殺されそうになりながらもシュウは怯まず頭の上で手を打ち合わせた。
ぱんっと乾いた音が響く。
「お願いします!俺らに勉強教えてください!」
「お前ならそういうと思ったが…」
ちらりとシュウの後ろにある席に座っている3人を舐めつけた。
恥ずかしそうに頬をかいたリョウも、胸の前で手を打ち合わせて懇願のポーズをとっている。妙に協調性のある連中だ、とハルトは思った。
「頼むハルト!もうお前しか頼れないんだ!」
「べっ別に俺にはユツキがいるからいいんだけどよ!皆でやったほうが効率いいかなーって思っただけなんだぜ!」
「一緒にしたかったって素直に言えよ」
「…サガラと、二人っきりがよかった」
一名あからさまな落ち込みようだが、ハルトは気にしない。
この馬鹿達を教育するお願いも、まだ認めていない。
「コツコツやってれば直前に焦らなくても良かったんだ」
「その通り!お耳に痛いばかり!だから教えて!」
「わかってないだろ」
かたくななハルトの姿勢を突き崩すのは難しいとみたリョウは、早々に最終兵器を発動させることを決意する。
こっそりシュウに「困った顔でハルトを見上げろ」と指示をした。
シュウはリョウの命令にいぶかしげにしつつも従ってみることにした。
「なあハルト…もうお前しか頼るやつがいないんだよ…一生のお願い!」
困り切った表情に、自分を見上げてくるくりくりした双眸。
これにはハルトの厳格な態度も破壊する威力を備えていた。
「……仕方ない。今回だけだ」
あっさり翻弄されたハルトはそっぽを向きながら目線だけシュウに向けて、苦々しげに承諾の意を示す。
「やったー!」
教師を手に入れたことによる喜びを、シュウとリョウはハイタッチをして分かち合った。
迷惑そうな雰囲気がカウンター付近から漂ってきているが、敏いハルトにしか通じない。
その瞬間、頷いてしまったことによる後悔が襲ってきたのだった。
こうして勉強会は開始を告げる。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
43 / 106