アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
番外編:とある冬の出来事
-
「よっほっえいっ」
リズミカルにアホ毛が跳ねる。白い息を空に吐き出すと靄になり空気に溶けた。季節は夜も起きるのが速くなる真冬。橙を通り越して紺色に染まる時間帯、シュウとハルトは街を歩いていた。
ハルトの参考書選びに付き合っていた。勉強嫌いのシュウにとってはつまらない日になるかと思ったが、案外悪くなかった気がする。
興味がないシュウにもわかりやすく度の参考書がいいやら出版社がいいやら簡潔にまとめてハルトは何度も説明した。
その流れでシュウもつい買ってしまった。テレフォンショッピングにだまされた気分だ。埃をかぶって部屋の隅で封印される運命にあるであろう重い参考書をぶんぶん振り回した。
細かい二色の石畳の歩道を歩く。近頃塗りなおされたであろう新しい色の上ばかりを選んで移動しているシュウ。
あほなシュウにはよくできすぎた幼馴染である。
「ちゃんと前見て歩けアホ」
歩道で遊ぶな。結構な力で馬鹿の頭をはたく。
後頭部を殴られたシュウはバランスを崩しかけるが、倒れこむ直前で踏ん張った。参考書が激しく振られ通行人にあたりそうになる。
狼狽しながら隅に寄ったシュウにぎろりと睨まれ、ハルトは演技臭くそっぽを向く。
「もーあぶないだろ!人に当たるところだった!」
「お前が普通に歩いていれば何ら問題はない」
ハルトは正論をチョップとともに叩き込み涙目になったシュウに鼻を鳴らした。ハルトの横暴な暴力に唇を尖らせ言い訳がましくさえずった。
「えー普通に歩いてちゃおもしろくないじゃん」
「あぶないつってんだろ馬鹿」
「心配性だなハルトって本当にーいいお母さんになれるよ」
「おい俺は誰の嫁になるんだ。どう考えても夫だろ」
「あっ間違えた姑だ」
「殴るぞ」
「いでっ!もう殴ってる!殴った後に言うな!」
いーっと歯をむき出して威嚇してくる子どもに深くため息をついた。
いつになったらお前だから過保護になりすぎると気付いてくれるんだか。
まだまだハルトの思いは報われない。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
102 / 106