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素直になんてなるものか
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せっかくリョウと会話できるチャンスだというので、味方ベンチ側に移動した一向。
「リョウー」
「おっ!来てくれたのか嬉しいぞ!」
汗をタオルで拭っていたリョウが、爽やかな笑みをシュウ達に向ける。滴り落ちる汗も相まって、青春オーラが濃くなったようだ。
「どうだ?俺からすれば今日の活躍ぶりはなかなかのものだと」
「全然。もっとシュート入れろよ」
「何故あの場面で6番にパスしなかった。していたら結果は変わっていたはずだこの馬鹿が」
「どこか、物足りない」
「えええええ!まだほめてくれないのか!しゅっシュウは?お前ならきっと褒めてくれるはずだろ!」
「なんか…爽やか臭い」
「シュウ!?そっそんなに臭いか?」
不安そうに掌を嗅ぐリョウ。本当はそんなに臭わないが、リョウの全身からほとばしる爽やかさにシュウは耐えきれなかった。
「次はもっと頑張るよ…頑張ればいいんだろ」
「当然だろ!何俺たちのせいにしてんだこんにゃろう!」
「今度は馬鹿なミスをしないように細心の注意を払い突っ込め。それぐらいしか取り柄がないんだからな」
「追加点、期待してる」
「くそ…お前らなんてもう…嫌いになれない自分が嫌だ…」
「リョウはドMなんだな」
「シュウ?キラキラした笑顔でそういうのはやめようか」
いつも通りリョウを弄っていると、弄られていた当人が何かを見つけたような顔をした。唐突に笑顔になり、大きく手を振った。
「おーいヒナト!お前も来てくれてたのか!」
「ヒナト?」
ヒナトの名前が出るとハルトの相貌が歪む。そこまで嫌いなのだろうか。シュウはリョウの視線の先に目玉を動かす。そこには戸惑ったような様子でたたずむヒナトの姿が確かにあった。
フェンス越しにこちらを見つめていたヒナトは、リョウに見つかったと理解し、逃げ出すか否か悩んでいたようだが、結局近づいてきた。
「来てくれるなら先に言っててくれればよかったのに」
「言えるかよ。俺が来たら顧問がまた寝込むだろ」
「先生はもう気にしてないと言っていたぞ。俺もお前が来てくれたほうが嬉しい」
「どう考えても建前だろうが…んなもんほいほい信じるからお前はお人よしなんだ」
「ははっそうかもな。それで、補習は大丈夫か?」
心配するリョウに、ヒナトの自尊心が跳ね上がった。
「なっなめてんじゃねえぞ!追試なんて軽々クリアしてやる!」
「また勉強教えてやろうか?この試合が終わってからでも」
「リョウの助けなんていらねえ!俺一人で何とかしてみせるぜ!」
ややきつめの口調で拒絶の言葉を吐く。
リョウは首を傾げたが、特に気にしていないようだ。
「そうか…本当にきつかったらすぐ連絡してくれよ?助けに行くから」
そういったのと同時に後半を告げるホイッスルが鳴った。リョウは最後に「がんばってくるよ」と言い置いてコートに入って行った。
遠ざかっていくリョウの背中を、ヒナトは冷や汗が吹き出る拳を握って見送った。
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