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案外ライバルはすぐそばに
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「うー疲れたー」
あっという間に夏休みは勉強に塗りつぶされ、追試の期間がやってきた。
長い長い夏休みのほとんどを勉学に費やしたシュウは終わりを告げるチャイムにシャーペンを投げ捨てる。
「全部、終わったな」
ヒナトがどこか感慨深げに呟いた。
反りの合わない天才にご教授されて屈辱ではあったが、初めて恥を忍んだ甲斐があったと感激している。
「よっしゃ!最終日ぐらい遊ぶぞ!」
サガラには度々遊びに誘われたが、それを断ってまで勉学に励んでよかった。
シュウはハルトに感謝しつつ帰り支度を済ませる。
「おいシュウ」
補習期間を共に過ごしたせいか、仲良くなったヒナトはシュウをアホチビではなく名前で呼ぶようになっていた。
仲良くなると突然フレンドリーになるタイプのヒナトは、帰ろうとするシュウを呼びとめる。
「なに?」
「そのよ…お前とあの真面目にアイス奢ってやるから帰りどっか寄らねえ?」
どこか恥ずかしそうにするヒナトへ、シュウは満面の笑みを送った。
「ありがとう!んじゃあハルトも呼んでくるな!」
「あ゛ー!やっぱりちょい待て!金やるからお前らだけで食いに行け!」
頑張ったヒナトだったが、やっぱりあの気の合わない野郎と女々しいアイスを頬張ることなどできなかった。無理やりシュウに千円札を押しつけ、逃げるように帰ってしまう。
「ちょっちょっと待ってよヒナト!」
慌てて追いすがるがサッカー仕立ての俊足は止まることなく階段を飛び降りて行ってしまった。
取り残されたシュウはポツリと一人でたたずむ。
「恥ずかしいならやらなきゃいいのに」
「何がだ」
独り言に返事が返ってきて一瞬吃驚したが、かけられた声音の低さに覚えがあったので振り返る。予想通り仏頂面のハルトが背後に立っていた。
「あっハルト!ヒナトがお金くれたんだ!この金でアイス食いに行こうぜ!」
ヒナトが恥を忍んでまでお礼をつくそうとしてくれたのだ。その好意を無下にあしらうのは気が引ける。シュウはそう付け足そうとしたが、ハルトの不機嫌な溜息で遮られてしまった。
「…帰るぞ」
「えっアイスは!?」
「気分じゃない。小遣いにでもしてろ」
そっけなく言い放ったハルトにやや非難めいた視線を送るが、けろりとポケットに千円札を突っ込んだ。
「俺が食うからいいよーだ。せっかくヒナトがくれたのに…」
まだぶつぶつ文句を言ってるシュウを、ハルトは眉間にしわを寄せた顔で見る。
何とも言えない視線に気づいたシュウが「なんだ?」とほおをかいた。
「………なんでもない」
「変なハルトだな…」
シュウはまだ納得がいってないようだが、ポケットに詰め込んだ大金を思い出したのか、顔をとろけさせてアイスの品種を歌いようにつぶやきはじめる。
「………餌付けされてんじゃねえよ」
ハルトのストレスはたまる一方である。
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