アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
相談
-
二学期が始まり、慌ただしく数日が過ぎていった。
元の生活に戻るのには多大な疲労や忙しさを纏い、生徒たちを翻弄し続けた。つまり、学校生活に慣れるのに時間がかかってしまった。
あの夏祭りの夜から、ハルトとは暗黙の了解で距離を置いている。
離れていく距離を縮めようと頑張っていたシュウだが、どうもハルトにはその気はないようで口を交わさない日々が続いた。
答えの見えない喧嘩を、解決するすべなど知らなかった。
そろそろ精神的につらくなってきたシュウは、良心の塊であるリョウに相談することにした。
放課後残ってもらい、机と椅子を少し動かして向かい合う。
「どうしたんだ?」
「実は………」
シュウの大まかな説明に、リョウは困ったように首をかしげて曖昧に笑ってみせる。
「だからお前ら最近話してなかったのか…なにか心当たりはあるのか?」
「ないからどうすればいいかわからない」
目に見えて鬱々としている少年に、リョウはうーんっと腕を組んだ。
この手の悩みを解決するすべが思い浮かばない。喧嘩の理由がはっきりしていればそこから解決策への糸道を手繰り寄せるのだが、ノーヒントでは想像すらままならない。
最近のハルトの様子を思い浮かべる。
どこか少しやつれた様子で本にかじりついていた。体中からかかわるなという強い負のオーラを吐き出し、人を引き付け寄せない。
リョウでさえも話しかけるのを躊躇われるぐらいだ。少しでも気に触れば、ハルトの怒りに石を投げ込んで波紋を起こしてしまいそうで、ろくに近づけもしない。
時たま心の疼きに耐えきれなくなったように、髪をかきむしる。だが心情を吐露するようなまねはせず、疼きがおさまるまで耐え抜いているようにも見える。
明らかに何かに手を焼いているようだ。
ちなみこれはシュウは分からないだろうが、本当に一瞬だけサガラと話しているシュウに視線を向けることがある。
自嘲的な悔恨の情がありありと浮かんでいた。
「俺にはよくわからないが、もう一度話し合ってみたらどうだ?」
「でも…また拒否されたら嫌だな」
幼馴染からの拒絶はこたえるものがある。シュウは悲しそうな顔をしてそういうが、リョウは少しだけ真面目な表情をする。
「なんではねつけられたのが嫌なんだ?」
「なんだって、そりゃ友達にあっちいけって言われたら落ち込むだろ?」
「それだけじゃないんじゃないか?」
「?」
「もっと簡単で気づけるようで気づけないものがな」
リョウの言っている意味がシュウには理解できない。親友だと思っていた人に距離を置かれれば傷つく。それは当然だろ。
まだほかに理由があると言いたいのだろうか?
「詳しくは教えないぞ」
「えーなんでだよ」
意地悪なリョウにシュウは頬を膨らます。ここまでじらしておいて答えは教えませんでは脱力しても仕方ない。
ヒントヒントとせがむシュウに苦笑しながら立ち上がる。
「ハルトが一方的に落ち込んでるのならそれはあいつが悪い。だけど何にもしてないのに勝手に嫌うようなやつでもないだろ?」
「やっぱし俺が何かしたのかな…」
「さあな。自分で考えてみろ…それじゃあ後は頼んだぞシュウ。ハルトを助けてやってくれ」
「…助けてとか大げさだなあ。だから空気なんだよねリョウって」
「今の一言でシリアスが崩れ落ちたぞ」
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
60 / 106