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プロローグ
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平凡な毎日。
そんなもん、何も考えていない奴等の無駄吠えだ。
「悠斗ぉ~!今、帰りかぁ?」
晴れ渡る、ウザい位の青空。
そして、ウザい声。
「……………………涼…………………声、デカい」
自分を呼ぶ声に反応し、ダルそうに振り返る、高校生。
彼の名は、市川悠斗、16歳。
柔らかい茶色の髪に、ややグレーな瞳。
背も高く、なかなかの綺麗顔。
学校でも、それなりにモテるイマドキ高校生は、何故かいつも無愛想。
「うげ………………悠斗、今日もやけに不機嫌だな」
その無愛想な悠斗に駆け寄る、幼馴染み、北見涼。
悠斗の真逆をいく、爽やかなイケメン男子である。
二人は同い年で、家も近所と言う事もあり、幼い時から仲が良い。
ただ、今年から高校が別々になり、たまにこうして帰宅時に会うのが日課になっている。
「お前のうるさい声で、不機嫌になった」
悠斗は、自分の隣に来る涼をチロリと睨み、ムスッと口を閉じる。
「ひど………………たまにしか会えないツレに、それ言う?」
慣れてる涼は、ただ苦笑い。
気の短い悠斗に比べ、涼は常に穏やか。
進学校に入学した悠斗とは違い、サッカーで強豪校に引き抜かれた涼は、悠斗以上に女子にモテる。
なのに、彼女ナシ。
暇さえあれば、こうして悠斗に会いに来る。
「は?昨日晩も家に来ただろ…………………どこが、たまに?学校違うくせに、やたらと顔見てるわ」
でも、そんな涼がいるから、まだ悠斗は孤独ではない。
あまり友達も作りたがらない悠斗の日常は、たった一人の家族を除いて、人間との交流が皆無なのだ。
「いーじゃん、家近いんだしぃ♪なぁ、今日もお前んち、行ってもいいか?」
「…………………え……………」
今日………………………。
「……………………いや、今日は………………」
自分の顔を覗き込む涼から目を逸らし、悠斗は口ごもる。
「なに?何か用でもあるのか?」
「ん…………………あ、兄貴が………………兄貴が大学早く終わるから、友達連れて来るって言ってたんだ」
「…………………隼斗さんが?」
「あ………………ああ、騒ぐと煩いからさ……………」
と、言うか…………………あいつが、煩い。
色んな意味で。
「そっかぁ…………………隼斗さん、格好いいもんなぁ…………………モテモテだから、しゃーないか………………なら、後で電話するわ♪な、俺のラブコール、待ってて」
「何で、ラブコール!?」
呆れる悠斗を尻目に、涼は満面の笑みで手を振る。
「じゃー、後でなぁ~♪」
「おい、涼…………っ」
彼女か!
嫌みな位の笑顔を振り撒き、ポジティブ涼は去っていく。
「…………………ったく、なんなんだよ、あの馬鹿」
サッカーのし過ぎで、脳まで筋肉だ。
キィ………………………
悠斗はブツブツ愚痴を溢しながら、自宅の門をゆっくり開ける。
チラッと目を横に振れば、カーポートには、兄の愛車ワー○ン。
「……………………もう、帰ってんのか……………」
一気に気分が滅入る。
ガチャ………………………
玄関に鍵を挿し、回した途端に目に入る、女物の靴。
……………………今日は、女。
それだけで、足も鉛のように重く、一歩が辛い。
「………………っあ………………ぁあ……………んっ」
そして、聞こえる、喘ぎ声。
「チッ………………死ね、クソ隼斗」
バンッ……………………!
悠斗は、持っていた鞄を階段へ投げつけ、キッチンへと向かった。
今日、涼を家に呼べない理由。
それは、コレがあるから。
「ヤるなら、ホテル行けよ!」
冷蔵庫からコーラを取り出し、悠斗の苛立ちは続く。
この家に、親はいない。
外交官をしていた父と、それに付き添い海外を回っていた母は、勤務先のドイツで事故に遇い、2年前に亡くなった。
学校があった為、日本に残っていた悠斗と兄隼斗だけは、無事だった。
幸い、親は多額の保険金と莫大な遺産を残してくれたので、生活には困らない。
でも、悠斗の苦痛な毎日は、そこから始まった。
「…………………何が、格好いいだ……………最悪な兄貴じゃないか…………………」
最悪な、兄貴。
そんな兄と、二人だけの毎日。
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