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初恋
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「弟を、助けたいんじゃない…………………好きな子を、助けたい……………………そう思って、必死だった」
波の音と共に響く、隼斗の声。
『悠斗、好き………………大好き』
今日、何度も繰り返してた隼斗の言葉は、戯れ言なんかじゃなかったんだ…………………。
悠斗は、目の前で話す隼斗の言葉に耳を傾けながら、何故か今日一日の事を振り返っていた。
戯れ言じゃない。
何だろう………………心の隅っこが、熱くなる。
「あ……………………だから、ファーストキス…………」
思い付いたように、悠斗はその事を口にした。
中一になったばかりの隼斗は、さすがにまだ彼女とかもいなかった。
自分との人工呼吸が、隼斗にとってのファーストキスだった。
…………………………え?
「いや……………俺のファーストキスも、隼斗だし」
そもそも、涼とキスするまで、隼斗しか知らない俺は、何もかもが隼斗に奪われてる。
それについては、どうなんだろう。
全てが、隼斗が初めて。
その方が、何か凄い……………………。
「クス……………………言えてる」
「笑い事じゃないから。兄弟で初めてを共有って、何か引くし……………………」
笑顔の隼斗の横で、悠斗は何だか複雑そうに顔をしかめる。
それでも、隼斗の握ってくる手を、離す気にはならなかった。
潮風で冷たくなる身体とは裏腹に、繋がった手は、やけに温かみを帯びている。
温かい。
こんな風に隼斗を感じるのは、いつ振りだろうか?
「…………………………でも、俺には忘れられない一日。あの後………………父さん達が来て、悠斗を助けてくれたけど…………………この一件で、俺は悠斗が好きなんだって、気付かされたから………………」
「……………………隼斗………………」
いつも、自分の後を追って来てた、悠斗。
ただ可愛くて、勉強を教えたり、一緒に寝たり…………側にいる事が、嬉しかった。
それが、好き?
最初は、おかしいんじゃないかと思った。
「馬鹿だよな…………………悠斗を病院へ運ぶ父さん達の後ろで、俺はずっと唇を触ってた。まだ僅か小3の弟と重ねた、唇…………………柔らかくて小さな唇に、ドキドキが止まらなかったよ」
初恋。
多分、それ…………………。
隼斗は、自分の話に聞き入っている悠斗の手を握ったまま、一歩前へと踏み出した。
「…………………隼……………」
「好き…………………悠斗…………………あの頃から、俺はお前を、好きなんだ」
好き。
そう言って、重なってくる、唇。
もう、今日何度目のキスだろう?
夕焼けに照らされて、オレンジ色の隼斗の瞳には、悠斗だけが映っていた。
悠斗だけ…………………。
あの頃から、悠斗しか、見えていない。
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