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砂浜
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あれから、どれだけ経っただろう。
辺りは、すっかり暗くなり、雲がかかった月だけが頼りな闇の中。
何となく、俺達は砂浜にしゃがみ、ボーッと海を眺めてた。
「…………………何か、顔カピカピ………………」
悠斗は自分の頬へ手を当て、涙が流れた痕を辿った。
随分、泣いてしまった。
何故、あんなに泣けたかわからない位、泣いた。
涙が通った所へ潮風が当たりすぎて、ホントにカピカピのように乾いてる。
「ごめんな………………………」
そんな悠斗の顔へ手を伸ばし、隼斗はまた謝った。
「……………………隼斗…………………」
何て言うのか。
あれだけ毎日苦痛な日々を過ごして来たのに、こうも何度も謝られると、怒りなんてものは呆気なく消えていた。
多分、俺は心の底から隼斗を、嫌いになれてなかったんだと思う。
馬鹿な弟だな、俺。
「……………………悠斗………………」
頬に触れた指先を、悠斗の髪へと流し、隼斗は愛しそうに髪の毛を撫で上げた。
優しい、隼斗の瞳。
ダメだ、また泣きそう。
悠斗は顔を伏せ、隼斗の肩へ額をつけた。
「……………………兄弟でも、恋ってするんだな…………」
波の音で消されそうな声で、悠斗は呟く。
「みたいだね…………………………俺は、今でも悠斗が好きだから……………………」
隼斗は、自分にもたれる悠斗の肩を抱き、自分の想いを口にする。
自分でもわからない。
どうして、悠斗だったのか……………………。
「悠斗を傷付ける自分がわからなくて、色んな奴と付き合ったけど、この気持ちだけは消えなかった。いけないと思えば思うほど、悠斗を求めてた」
悠斗が、好きでたまらない。
でも、こんなのは、恋じゃない。
一番好きな人を傷付けて、何が恋なんだろう。
ただの、自己満足だ。
「………………………悠斗………………俺、家を出るよ」
隼斗は潤む目を堪え、震える唇で自らに決断を下す。
「隼…………………っ」
ザパァァァ……………………ン
その途端、大きな波が砂浜へぶつかり、辺りに水しぶきを散らす。
「もう………………悠斗を苦しめたくない」
隼斗の声だけが、波に拐われるように、悠斗の心へ打ち寄せる。
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