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それでも時は流れる
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隼斗の決断は、覆る事はなかった。
あの日、夜の海での時間は、俺達に大きな変化をもたらした。
2年後。
「市川ぁ~!お前、進路希望出してないじゃないか!」
有名な進学校の玄関先。
下校する生徒達が行き交う中、若い教師が一人の生徒を呼び止める。
「…………………ああ、保坂」
「ああ、保坂…………じゃねー!お前、3年なんだぞ?いい加減、志望大学決めろよ!」
生徒に近付いた教師は、冷めた様子のその男子生徒を前に、渋い顔で一喝する。
3年。
もう、3年生。
「兄さんに相談してみろ。今度、お前の兄さん、大学院へ上がるんだろ?今のお前なら、兄さんと同じ大学にだって行ける。な?今週中に提出しろよ」
散々『兄さん』を連発し、教師は男子生徒の肩を叩くと去って行った。
「兄さん、兄さんって………………今、いねーよ」
男子生徒は溜め息をつき、前髪をかき上げた。
あれから、身長が7㎝伸びた。
丁度、隼斗と同じくらい。
「………………………2年、会ってねぇし」
そう呟く表情は、どこか寂しげにも見えた。
「…………………あち…………………」
廊下から差し込む日差しを受け、顔に手をかざし、空を見上げる。
悠斗、高校3年生の夏が、始まろうとしていた。
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