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衝動
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「……………………わかった」
ピッ……………………
小さな声で、悠斗は返事をした。
丁度、学校から帰りがけの道端。
隼斗が来る楽しみで、どれだけ今日の授業が長く感じたか。
ただでさえ長い時間が、何倍にも思えたもんだ。
「バイトって…………………」
納得のいかなさに、心がモヤモヤ。
わかってる。
隼斗は隼斗の生活があるって。
でも、あまりにも楽しみ過ぎて、この突き落とされ感は半端ない。
悠斗はスマホ片手に、立ち竦む。
「おーっ、悠斗ぉ!」
そんな悠斗に、救いの神?
「………………………慶太」
住宅街へ入りかけの道。
またいつものように、慶太が紙袋を持って歩いて来る。
「ナイスタイミング~♪今日はな、オムライスと唐揚げ作って………」
「隼斗のバイト先教えて!!」
慶太の声を遮る、悠斗の必死の頼み。
「……………………え?」
「隼斗に会いたいんだ!!バイト先、教えてよ!慶太なら、知ってるだろ!?」
家がダメなら、バイト先に行けばいい。
一目でいい…………………隼斗の顔が、見たい。
自分にすがり付いて頼み込む悠斗に、慶太は面食う。
「あ、ああ………………そりゃ、いいけど。何かあったのか?……………………意外だな、お前から隼斗の話振って来るなんて」
何か。
何か………………………何かって、言って終われるもんじゃない。
気持ちがあり過ぎて、どうにもならない事になってしまってる。
「………………………頼む…………………早く、教えて。隼斗に、会いたいんだよ………………………」
「…………………悠斗…………………」
慶太の服を握りしめ、悠斗は込み上げる想いに、赤い顔で目を潤ませた。
馬鹿みたいな女々しい奴に思われるかもしれないけど、それくらい、今日はもう気持ちが隼斗に向いていた。
今更、会えないなんて、辛すぎる。
「………………わかった………………きっと、隼斗喜ぶよ」
俯く悠斗の肩を叩き、慶太は優しく笑った。
「慶太…………………………」
「2年前から………………絶対お前らがそうなるって、俺思っていたんだよねー♪俺は、いいと思うよ?そう言うの…………………世の中、理屈じゃないんだよ」
なんだよ、慶太。
そのしてやったりな、顔。
だけど、その優しい笑顔が、えらく身に染みる。
有り得ない事を考えてる俺に、唯一味方が出来たようで、凄く心強い。
「思い切り、甘えてやれ」
慶太の言葉に背中を押され、俺は隼斗に会いに行く。
この2年、知らなかった隼斗に、近付く為に。
「うん……………………ありがとう!」
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