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つり橋をたたいたとしても
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待ち合わせと言われた路地裏は、いかにもな薄暗さとイヤな生乾きのような湿気臭い匂いで充満している。
マスクくらいしてくりゃあ良かったな。
周りの空気に気を配り、とりあえず、警察とかを撒けるような逃げ道のあたりをつけておく。
こんなんなるなら、ちと肩身が狭くても、ライの家に入りゃあよかったと、後悔もなくもない。いつも何をしてもライの上にたってたってのに、定職につかない俺の身の上を考えると、どうやって位置をとっていいのかわからなくなっていた。
目の前によれたスーツに柄シャツを着たいかにもといったオッサンがやってきた。
松川さんに指示されたマンホールの脇に立ち、オッサンの様子を伺う。
合言葉と割符を出して荷物を受け取るだけの仕事だっていうのに、背中がピリピリしてくる。
悪い予感ってやつだ。
「カード、落としましたよ」
本当にそれが合言葉なのか疑っていたが、俺はオッサンに声をかけた。
相手は俺を見返して、ふっと息を吐くと、
「黒川と書いてあるか」
合言葉をちゃんと返してくる。俺は、ポケから渡された割符を取り出して渡すと、男はごく自然に割符をちらとかくにんして受け取ると、黒いカバンを俺に手渡す。
「確認するから持っていてくれ」
傍からは、落とし物のやりとりにしかみられない完璧?なフェイク。
ギリギリと俺の下のマンホールの蓋が開く。
俺は指示どおり、マンホールに渡されたカバンを落とした。
瞬間。
オッサンは、俺の腕をギリッとひねる。
「イテェ!!何すんだ!?」
「何の真似だ、このガキッ」
マンホールに目をむけると、蓋はしまっている。
「ッ、く、痛ェって!そっちこそ突然、なに、すんだ」
グッと反対の腕でオッサンの顎にアッパーを決め、怯んだすきに間合いをとる。
「さっきのカバン、どこにやった!?」
「しらねーよ。取引なんだろ、カードは渡した」
背後の路地から、一見でカタギじゃない男たちが、10数名出てくる。
「偽物渡されても、取引にならねーっつてんだ」
偽物、だと!
警察に捕まる以前に、こっちが敵なんて聞いてねえ。
「し、しらねーよ。俺は、言われた通りに交換しただけだ」
「素直にどこにやったか言えば、悪いようにはしねえ」
オッサンは俺の間合いに入ってきて、手を伸ばす。
捕まれば、殺される。
警察の方がまだ、マシだ。
逃げるしか、ねえな。
俺はオッサンに飛び蹴りをかまして、倒れた隙にさっき見つけた逃げ道に向かって駆け出す。
「あのガキ、つ、つかまえろ!」
オッサンの声が響く。
俺の足、もっと加速しろ!!
パァン、パァンと弾けるような銃声が響き、破裂するような痛みが全身を駆け抜け、俺はもんどりうって倒れる。
「ヒッ、いやだ、ッにげ、ねーと」
痛みより恐怖が勝る。必死で地を這うように路地を出るようとする俺の首筋に、金属の冷たい感触が押し当てられた。
「もうにがさねーよ、糞ガキが」
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