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建前
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「お前が?どうやって」
久しぶりに二都の冷ややかな声を聴いた気がする。
たった今振ったばかりだというのに、何を言ってるんだ俺。
三守は頭の中で大きく前言撤回と叫んだ。
「なんだ、フェラでもしてくれるのか?」
「フェラ?」
「…知らないならいい。馬鹿だな、お前」
そう言ったっきり、二都はドアの外へ出て行ってしまった。
フェラぐらい知ってる。
そんなこと言われたって、さっきの俺はどうかしてたとしか言いようがない。
三守はぐるぐると頭の中を働かせ、先ほどの失言の原因究明にいそしんだ。
手っ取り早く、なんて言い方はおかしいが。
いつまでも追いかけられるのは性に合わない。
追いかけたい側だとは言わないが、今更過ぎるのだ。
何のためにこの部屋まで教えたと思ってるんだ。
ため息を一つ吐き、大事なことを一つ捨てる。
閉じられたドアを開き、二都のこもるトイレへと向かった。
「二都」
ドアの向こうに届くとは思えない小さな声で三守はつぶやいた。
聞こえていないのだろう。返事はない。
もう一度、かすれた声で呼ぶ。
「二都」
「…なんだ」
二回目にして返事が返ってくる。
二都も大概だが、三守だって大概だろう。
「次の発情期はいつだ」
「は?」
ドアが開き、突拍子もなく二都が言った。
一瞬意味が分からずに固まってしまった。
「次は…三週間前に発情期があったから、恐らく約二か月後ってところか?」
「そうか」
本来ならΩが絶対他人に口外しない発情周期。
二都の気迫に押され、馬鹿正直に漏らしてしまった。
口にした後にしまった、と思ったが、後の祭り。
何してんだ俺の馬鹿、と三守は爪をたてて握こぶしを作った。
「次の発情期。次が来るまでにお前を抱く」
「え、」
「来る『まで』だからな。発情期じゃない、素面のままで抱きつぶしてやる」
ここにきて、初めて二都のことをただ一人のαとしてみた気がする。
三守は茫然と立ち尽くし、二都の言葉を咀嚼しようと踏ん張っていた。
そして、ようやく。
「ま、までは含まれるぜ」
嫌味の一つも言えない頭ではこれが精いっぱいだった。
その三守の言葉を聞いた二都は、いつもの憎たらしい笑みを残してトイレのドアを完全に閉めた。
三守は扉を見つめたまま、沸々と怒りが湧いてきていた。
「トイレでかっこつけるなアホ!!!!」
数年ぶりに二都にアホって言った気がする。
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