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据え膳食わせぬ
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空気が澱んでいる。息を吸えば吸うほど、体は熱くなる。
二都がもう一度、ドアを開くように、とジェスチャーをした。
信用ならない。前科一犯持ちめ。三守は持っていたスマホでの会話を試みた。
「はあッ…なんだ…」
『ん、何というか。すごいな。エロい』
「切るぞ…ん、う」
今度は止める素振りを見せず、窓越しに二都は笑った。喧嘩売ってるのか。三守は晴れない頭の中でもう一度二都を殴る算段を考える。どれも非現実的なものばかりだが。
『きついだろ。なんとかしてやれる人、探してるんじゃあないのかい?』
わざとらしい言葉に、わざとらしい笑い。すべてが鼻につく。三守は、二都の助けなんぞ借りるか、と通話を切った。
(こいつに傾いた俺が馬鹿だった…!!!)
腹の底で煮えくり返っているいら立ちを抑え、なんとか二階堂の連絡先を探し当てる。
きつい。スマホを操作する手すら震える。久しぶりの薬を切らした状態に、三守は下唇を噛んだ。
とてもじゃないが、我慢できない。
二階堂への通話ボタンを押す。瞬間、画面が切り替わり、スマホが震えだした。
表示には一ノ瀬とある。
今、電話にでたらまずくなることはわかりきってる。でも。
表示をのぞき見した二都の態度が急変したことに、三守は気づいた。それでも、三守は通話許可のボタンを押した。
『三守ー?五木が飲みたいってうるさいんやけどよ。まだカイシャの近くにおるなら、一緒に飲まんか?』
いつもの一ノ瀬の声に、三守は安心感を覚えた。声を聴いただけで、体が落ち着くのがわかる。熱は上がる一方であったが。
返事をしようと口を開けば、熱っぽい吐息しか出てこない。マイクにそれが当たらないように、三守は一度スマホを離した。
「ふ、っ…はァ、」
窮屈になっている、出来上がってしまった前が視界にはいる。こんな状態で飲みになんて行けるわけがない。
断ろうと、口を開いた。その時、少しだけ吐息がマイクにあたってしまった。
「すみま、せん。私は、もう家なんで…また次回っ…おねがい、します…」
不自然にならないように、なるべく流暢に断ることを心掛ける。今では、スマホを持つ腕すら震えている。
では、と一ノ瀬からの通話を三守は切った。違和感なく終えられたはずだ。窓の外に視線をやると、目の据わった二都が腕組みをして立っていた。
静かに、こんこん、と窓をたたく。
この雰囲気、見たことある。
あれだ。この間の襲われたときの感じだ。
すぐさま車のロックを確認し、窓も全部閉めてあるか確認した。怖い、怖すぎる。うなじを撫でられた時より、今の二都は怖い。
それに反比例するように、キュンと、体の中心が疼く。
αに犯されたい。
二都のフェロモンは直接摂取していないはずなのに、どんどん体温は上がっていく。やってはいけない事だと理性が働いているのに、体は本能に従う。どうすれば、どうしてくれるのかを分かっている。三守は車のロック解除に手をやった。
一斉に車のロックがすべて外れた音がした。やってしまった。
二都は緩慢な動きで、ドアの取っ手に手をかけた。
「さ、三守。俺に任せてくれ」
そういいながら笑うと、二都は三守の顎に触れた。
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