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はじまり3
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「ないな…」
記憶の中で反芻しながら歩いた道をたどる。それらしいものは見当たらず、遂に刑事部の前まで戻ってきてしまった。
「くそ…帰るか…?」
溜まっている書類のことを思うとどうもいたたまれないが、仕方ない。
退勤してもおかしくはない時刻だろう。
午後9時。いささか気になるが、やむを得まい。
時計の針が微かに動き、示した数字だった。
駐車場の車へ向かう道中も絶えず目を動かしながら移動する。
ふと、誰かがいると思った時には、もう遅く。
「おい、何変なことしてるんだ」
二都だ。同期の彼は確か唯一のαだったか。
「別に…探しものだ。落としたんだ」
「そうか。遠目で見ても目立ってたぞ」
嫌味とも感想とも取れぬことを言う二都。
この二都という男と話すことはめったにない。
何気に中高大、と同じだ。
しかし、同じクラスにはなることはなく。
部活の剣道でも三守は大将、二都は補欠、というポジションであまり話すこともなかった。
「もう帰るのか」
よく見ると二都は、少し膨らんだ鞄を手にしている。
「あぁ、残りの仕事が終わったらな」
「残業かよ」
「まぁそうなるだろうな」
そうか、と軽く返事をして二都は鞄を持ち替えた。
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