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予測可能回避不可能
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病人を扱うように丁寧に手を引いていく一ノ瀬。
三守はまだ収まらない熱に叱咤をとばす。
先ほどの一言で一ノ瀬が何をしたかったかを悟る。
二都だ。
一ノ瀬が二都に対して何らかの感情を懐いているのか、はたまた三守に対してなのか。
それは三守にもわからない。
ただ、それは何らかの嫌がらせを含んでいることだけは三守にはわかった。
「一ノ瀬さん、私、もう大丈夫ですんで」
「なんがよ。まだふらついとるのに。俺も駐車場に向かいよるけん、大丈夫」
いや大丈夫ではないのだ。何が大丈夫なのだ。
「いや、あの私この後約束が…」
何とかして一ノ瀬から逃げようと、手を離させようともがく。
しかし一向に開いてくれない手のひらに三守はもがくだけだった。
一ノ瀬と一緒にいる所を二都見られてはいけない。
不思議とそんな思いが強く、駐車場もほど近い出口になってももがいていた。
「さ!三守、帰ろか!」
突然大きな声で一ノ瀬は言った。
余りの突然さと、大きな声で三守は驚き目を見開いた。
「い、一ノ瀬さん?だから私は約束が…」
「約束があるんやろ?俺とやろ??ん??」
無言の圧力、職権乱用。
上司命令にも近い圧力を感じた三守は根負けした。
小さな声でわかりました、帰りましょうと呟く。
いつの間にか繋がれていた手も今は肩に腕が回してあった。
そのまま駐車場に向かう。
ふと、ここで違和感を覚えた。
「あの、一ノ瀬さん。私、車で来ているので…」
「ん?おお、俺の車に乗れ。今日は乗せてっちゃあわ」
「え、いや、そういうわけには」
「いいって!車は明日明日!!」
強引に首元を引っ張られる。
うわっ、と小さな声が漏れる。
ははは…と乾いた笑い声を洩らしながら結局一ノ瀬の車付近まで歩いていった。
「こんばんは、一ノ瀬さん」
軽く、というか完全に怒気を含んだ挨拶が聞こえた。
三守は俯き加減の笑い顔をそのままに硬直する。
(わ、忘れてた…こいつがいた…)
三守の頭上で一ノ瀬は待ってましたとばかりに不敵な笑みを洩らした。
「よぉ、二都。お前も帰りか??今から三守と飲みに行くんやけど、お前もどう?」
「いえ、この後車を運転する約束事がありますので、遠慮させていただきます。」
「そかー残念やんな。さ、三守行こうか」
二都の会話に含まれる感情の色は三守にもわかった。
それを敢えてわからない振りをする一ノ瀬。
三守は何もしていないのに何故か職務質問された時のようなドキドキを感じていた。
「一ノ瀬さん。先ほど三守が約束があると言っていたでしょう。それは私との約束ですので」
「ほー、お前と?…」
「ええ」
…上を向けない。
先程から俯いたままだ。
やがて一ノ瀬が根負けしたのか、肩に組まれていた腕がするりと解けた。
「三守、また今度な」
そうにっこり笑うと、一ノ瀬は車に乗り込み、そのまま駐車場から出ていった。
「……」
三守は一ノ瀬の車を目で追い、呆然と出口を見つめた。
しかし二都はこれを許さず。
「三守、」
含まれる怒気と僅かな香りに三守は体を震えさせた。
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