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恋心 (結)
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いつの頃からだろう?
僕は、自分の存在を否定しながら生きている。
理由は単純だ。僕の持つ性癖の所為だ。
僕の恋愛対象は、『同性』だ。
物心ついた頃から、友達と遊ぶのは楽しかったし、
女の子と遊んでいても、違和感がなかった。
そして、最初に好きになったのは、保育園の同じ年の同じクラスの男子だ。
たまに出し物をしてくれる、和太鼓の演奏家や、弱小劇団の俳優にも、ときめいた。全て男性だ。
多分、保育士に男性がいたなら、その先生に恋したかもしれないが、僕のいた保育園には男性の先生はいなかった。
そして、月日は流れて高校生になった今でも、僕はその性癖を隠したまま、穏やかに時を過ごしている。
もちろん選んだのは男子校だ。女子に興味ないのに、同じ空間にいたら、面倒なこともあるかもしれないからだ。
今日も教室の窓越しに、彼の体育の授業を見つめている。開け放たれた窓からは、心地好い風が緩やかに流れ込んできている。
僕のクラスでは、今は現国の授業の真っ最中だ。
僕が自分の性欲を伴う恋をしたのは、この学校に入学をして後だった。今、校庭を走る彼と出会ってしまったから。
まともに口も利いたこともない、文武両道、良家に育った彼は、アイドル顔負けの甘いマスクに、程よくついた筋肉。いわば、細マッチョというヤツだ。体育着の上からでも、その筋肉のバランスの良さがわかるほどだ。
一つ年上の彼とは当たり前だが、同じクラスにすらなったこともない。部活をしている訳でもないから、彼とは接点を持つこともない。
今日もカッコイイなぁ、と、ぼんやりと窓の外を眺めていると、その彼が体育の授業で校庭を走っていた。
ふと、彼の視線がこちらを向いて、ニッコリと微笑まれた気がした。こちらの視線に気付いたのだろうか?
驚いて赤面して、慌てて視線を逸らしてしまった。
心臓がバクバクうるさいくらいに鳴っている。
ーーなに?今の……
男子校だけど、彼はモテている。
同じ学校の男子の憧れであり、他校の女子が校門で待ち伏せて手紙を渡される、なんてことも珍しくはないことだった。それは公共交通機関でも当たり前のように行われているようだったが、全て、彼は断っている。
「オレ、好きな人がいるんだ。ごめんね。」
必ず、そう言って断っているらしい。
その場しのぎの言葉なのか、本音なのかわからないが、
当面は、誰とも交際をするつもりは無いらしい。
そんな彼の姿勢にも憧れてしまう。
ーー彼に愛される人物はきっと幸せなんだろうな……
いつかは、誰かのものになってしまうであろう彼を
僕は、ずっと好きでいるんだろうか?
少なくともあと一年半……彼が卒業するまでは、きっと好きなんだろうなぁ、と漠然と思う。
スポーツ万能で、勉強も出来て、顔も良い。
そんな完璧な人間と、万が一、思いが通じても、
付き合う、なんて想像ができない。
あの微笑みが、本当に僕に向けられたものならば、
どんなに嬉しいだろう。
ーーそんなことがあるわけが無い。
僕は、気を取り直して、黒板に書かれた文字を
ノートに写し出した。
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