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114(サイカ)
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幼いときから酷く聞き分けのよいこだと思っていた。
親を亡くしてから、わがままも言わなければ寂しいと言うこともなく、全部仕方がないと受け入れているようでそれをサイカはどこか悲しく思っていた。
義正も年相応な事をしない秋人に無理をしている、またはさせているのではとよく悩んでいた。
だから今、自分の腕のなかで「一人にしないで」「もうおいていかれるのはいやだ」と泣く秋人にサイカは酷く心を痛めながらも同時に嬉しく思ってしまう。
それはきっといつも笑顔の裏のもっと深い所に隠してしまっている秋人の「本音」が聞けたきがしたからだ。
そんなふうに気持ちをぶつけてもらえる相手になれたことがサイカにとっては何よりうれしかった。
(秋人……君はずっと頑張ってたんだね…。)
幼い頃はもっと寂しくて、悲しかっただろうに、それを見せなかった秋人はどれだけの感情を、言葉を、殺してきたのだろうか。
そして今回の事で、山積みになったそれらは限界に達して崩れてしまったのだろう。黒々として美しい秋人の瞳からは大粒の涙がポロポロとこぼれ服にシミをつくる。
サイカは胸が締め付けられるようなおもいでいた。
(愛しい相手が悲痛な声をあげ泣いているというのに僕はは何もできないのか、、。)
自然と抱きしめる腕に力がこもる。
サイカはどうしたら秋人が心から安心してくれるのか、必死に考えたが答えはなかなか見つからなかった。
サイカにも未来の事はわからないのだ。何か予期せぬ事態が起きて秋人と一緒にいられなくなるかもしれない。もしかしたら自分が消える事だってあるかもしれない、、。先の事は、誰にもわからない、、、。
それでもサイカは、言わずにはいられなかった。
少しでも秋人の不安が無くなるようにありったけの思いをのせて秋人へ言葉を紡ぐ。
『約束する。どんなことがあろうと僕は君をおいて消えたりなんかしない。絶対に。』
『きみがまた不安になったら僕が何度だって抱きしめて言ってあげる。秋人、君は一人じゃない、一人になんてさせない。僕も紅君も側にいるよ。ずっと君の側にいる。』
『僕達はそう簡単に消えたりなんかしない。それなりに力だってあるんだ、だから秋人が心配するような事はおきないよ。だから泣かないで……。』
サイカは秋人の目尻にそっと唇をよせその涙をすくいとると、ぎゅっとその身体を抱きしめた。
どうかこの気持ちが秋人に伝わるようにと。
しだいに秋人は落ちが着いたのかサイカの背にそっと腕をまわしてきてサイカはそれに安堵する。
(秋人、無責任な僕を許して、、、。この言葉が嘘にならないよう僕は全力をつくすから、、。好きだよ。命続くかぎり君の側に、、、。)
サイカは秋人を抱きしめたままそっと瞳を閉じた。
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