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160(馨)
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馨は今、微小ではあるが違和感を感じていた。
馨は潜入しやすいように少し周りから好かれる人物に自分を設定し術をかけたせいか、今回の体育祭で実行委員にされてしまっていた。
本来ならターゲットである秋人に探りを入れに行きたい所だったが思いのほかやる事が多くて出来ずにいて馨はよく知らなかったとはいえ断らず、後々自身で首を締めてしまった事に渋い顔をする。
そのため馨は、ならば昼休みくらいは探りを入れに行ってやると思っていたのに何故か少し歩くだけで今までに無いくらい声をかけられて行くてを阻まれる。
「鈴木く〜ん!一緒にご飯食べよっ!」
「鈴木!!さっき先生が呼んでたぞ!」
「鈴木先輩!さっきはとってもカッコ良かったです!良かったらLINEとか教えてもらえませんか!?」
もうかれこれこんなやり取りに時間を何分も使っていて、流石に余裕のあった気持ちが苛立ちはじめる。
(何なんだ今日は、、、やたら声をかけられる。いや、かけられすぎている、、、?いつもはここまでじゃ無いのに、、、?)
そうこう考えているうちにまた声をかけられ馨は笑顔で対応するも、頭の中は拭いきれないモヤモヤと何かわからないが胸に感じる引っかかりの事で一杯だった。
(何だか嫌な予感がする、、、。)
馨は両手を胸の前で組むと話している相手や周りには見えないようにそっと小さな小さな青白い火の玉を人差し指から出すと空へと放った。
その小さな火の玉はユラユラと揺れながらスーと何処かへと飛んで行く。
馨はそれを視界の端で確認すると、また笑顔で目の前の相手に向き直った。
会話を終え笑顔で別れた馨は、すぐ近くの壁に腕を組み寄りかかる。すると馨の隣にはいつの間に帰って来たのかあの先ほど放った小さな青白い火の玉がその体をユラユラと揺らし漂っていた。
馨は右手の人差し指をすっとたてる。
火の玉はそこにつられるように寄って来て指先の辺りでユラユラと揺れると青白い炎から紫色の炎へと変わった。
それを見た馨はおもむろに口を開いた。
「鈴どうだった?」
馨が紫色の炎に話かけると炎は一つ大きくユラリと揺れて、その炎の中に鈴の姿を映し出した。
「何の事はなかったぞ?ただ知り合いらしい奴数人とお前が前に言ってた友達らしい二人組と飯食ってただけだ。だくどどうした?お前がこんな事で俺を呼ぶなんて珍しくないか?もしかして、なんかあったのか?」
心配する様にそうたずねてくる鈴に馨は顎に手を当て目を伏せながら「いいや…。」と答えた。
(気のせいか、、、。)
馨は何故か動けない自分のかわりに鈴に秋人の様子を見にいかせていた。
いつもならこれくらいでは鈴を頼らないが今日は何んだか胸騒ぎがしてならず仕方なく鈴を頼る事にしたのだ。
しかし、結果は何もなくて自分が気にしすぎていたのかもしれない、焦りすぎてこんな事で鈴を呼んで悪かったなと眉を下げ溜息を吐く。
「、、、、、馨??」
様子を伺うように馨の名を呼ぶ鈴に、「ああ、、、。」と答えると馨はほんの少し微笑んだ。
「鈴、、悪かったなこんな事で呼び出して。お前も忙しいのに、、。ありがとな。」
素直にお礼を言う馨に鈴は何故か少し頬を染めて目を泳がせた。
「いっ、いやっ!いいって!そこまで忙しくねぇーし。それにお前のためなら俺は、、、。」
最後の方は小さくなりゴニョゴニョと聞き取りづらく馨は「??」となったがもう鈴が同じ言葉を繰り返す事はなく、昼休憩の終わりのアナウンスが流れたので馨は鈴に別れを告げ火の玉をスッと消した。
鈴に別れを告げたあと、自分の席に戻るため歩き出した馨はまだ胸から消えてはくれないモヤモヤに今日も帰りに秋人の後をつけようと思うのだった。
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