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「せ、、先輩、、、なんで。」
秋人は驚愕と不安で青ざめた。
息が詰まりそうになる緊迫した空間に生固唾を呑む。
ニッコリと笑いこちらを見据える先輩からは感情が読み取れなくて、だけど背筋がゾワゾワするような冷たい何かがひしひしと伝わり秋人はこれが「殺気」と言うものなのかもしれないと思ってサイカや翠蓮達の顔をみた。
秋人の予想は当たっていたようで三人の顔は見た事がないほど険しい。そのあまりの険しさに秋人の心に影がさす。
自分でも感じる程のそれはきっとサイカ達にはもっとキツイものなのだろう、そう思うと秋人は三人の前に出ずにはいられなかった。
「秋人っ!!」
後ろでサイカの止める声が聞こえたが今の秋人には、どうにかして三人を守らなくてはという考えしか頭にはなかった。
三人を庇うように前に出た秋人に先輩は面白くなさそうに困った顔をする。
「君はもうその理由がわかってるんじゃないかな?」
腕を組んで余裕そうにそう言った先輩に、秋人は焦りの表情を浮かべると必死になって先輩のしようとしてるであろう事を止めようとする。
「先輩っ、、、皆んな悪い妖怪とかじゃないです!凄く優しくて、俺何度も助けられました!皆んながいてくれるから毎日楽しいんです!先輩に祓われるような事皆んなしてないです!!」
あまりに必死に話す秋人の姿に先輩はクスリと笑うと、その白く長い指でサイカと翠蓮を指差した。
「うん、そんな事わかってるよ。まあ、そこの二人だけだけど。元々僕はその二人には用ないし。用があるのはそこの鳥野郎だけ。」
「え?」
そう言って先輩が最後に指差したのは、驚いた顔の紅だった。
先輩の目はさっきと違い秋人にもわかってしまうほど感情がダダ漏れで、、。
氷のように冷たく鋭いその眼差しは、憎しみや嫌悪、憎悪、殺意に満ち満ちていた。
『殺してやりたい。』
そう脳裏に聞こえてくるような先輩の鈍く光を帯びた瞳に秋人は自身が見られているわけではないのに恐怖で動けなくなった。
紅は何故自分がそのような眼差しを向けられるのかわからないといった困惑の顔で先輩を見ている。
秋人でさえそうなのだから直接それを向けられている紅はどれ程なのだろうと秋人はゾッとした。
はじめて殺気というものを肌で感じて恐怖でガタガタと震える秋人を後ろからそっと近づいたサイカが腕を引っ張り
自身の胸の中に抱え込むとそのまま先輩と距離をとる。
「秋人!お願いだから危ない事しないで、、。」
必死に、そして泣きそうにサイカからそう言われた秋人は「でもっ!!」と反論しようとしたが、サイカから「お願い、、、。」と悲痛な顔で言われてしまい黙るしかなかった。
先輩は視線を紅から離さないまま話を続ける。
「あのね五十嵐君。僕が前に君に言った祓屋って話は君にゆさぶりをかけるためのもので全部ウソなんだ。」
「う、嘘、、、、!?」
「そう、君の知ってる僕は全部が全部ウソ。僕は祓い屋でもなければ高校生でもない、もっと言えば人間ですらないんだよ。」
先輩はそう言うと両手を胸くらいの高さまであげる。
するとその両手から青白い炎が二つでてきてメラメラと燃えはじめた。
炎はしだいにその大きさを増し先輩の体全体を包み込む。
炎は渦のように先輩の周りで激しく燃えるとパァンっと一気に前後左右に飛び散り消えた。
衝撃で起きた風に一瞬目をつぶった秋人は次に目を開いた時、目の前にいる人物の姿に目を見開く。
メラメラと燃える青白い炎の中から現れたのは、制服に身を包んでいた先輩ではなく、黄金色に輝く長い髪や尖った耳、三つにわかれた大きな尻尾を持ち、白い狩衣に身を包んで妖艶な笑みを浮かべた先輩だった。
赤く縁取られた目元を更に細め笑うその顔は、ゾッとする程の美しさで、秋人は思わずサイカの腕にしがみつく。
「僕は妖狐、馨。烏天狗どもに殺された弟の恨み、この手ではらしにきた。」
先輩は静かにそう言うと紅めがけ物凄いスピードで突っ込んでいった。
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