アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
10
-
日が沈んできたのか、障子をてらす光がオレンジがかってきていた。
「幼い君は僕に触れていなかったから僕をみることはできなかったけど、よく近くにいたんだよ?」
「え!?気づかなかった…!」
「ほら、小さいときお気に入りの青いミニカーがなくなって泣いていたろう?」
驚いた。確かに俺は小さい時、じいちゃんが買ってきてくれたお気に入りの青いミニカーをなくして大泣きした。
どこを探してもなくて諦めかけていたが、何故か何度も探した机の上にそのミニカーはあった。その時は喜びでそこまで気にしていなかったが、今思うと…。
「あれはサイカさんが…?」
彼は微笑みながら頷く。
「あの時は大変だった。あのミニカーは君がなくしたんじゃなくて、たぶん縁側から侵入してしまったであろう猫がくわえてもって行ってしまったんだ。」
そう言えば、あの時は縁側のある庭に黒い猫がよくきていた。
「にゃんちゃん」って呼んでおいでってやっても興味なさげにそっぽを向かれたのを覚えている。
「あのにゃんちゃん…」
「そう、あのにゃんちゃんだよ。君が泣いているのを見てミニカーを返してくれるように頼んだんだけどね…。あの子なかなか返してくれなくて……、かわりに昔拾った鈴をあげたら喜んで返してくれたけどね。」
そんなことがあったなんて…。
「信じてくれる?僕は昔から君を知っているって?!」
信じるしかないよな、あんな幼い時のできごと見ていないと知らないだろうし…。
小さく頷くと、彼は「良かった」と笑った。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
11 / 242