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「葛城、ホントに響子ちゃんのことはフッきたのか?どうなんだ?」
「……うるさい!」
「まあ、お前がそういうなら彼女に未練なんて無いんだろうな。恋愛に未練があると、いつまでもズルズル引き摺って辛いだけだもんな…――」
柏木は不意にそう話すと、鏡の前で思い詰めた表情を見せた。俺は隣でその言葉を耳にすると急に黙りこんだ。
「ひとつ言っておく。恋愛に未練なんて無いほうがいいぞ。叶わぬ恋ほど虚しい気持ちはないからな。いつまでもその恋心を引き摺ってダサいだけだ」
「柏木……」
「まあ、これは俺からのアドバイスだけどな?」
アイツは真面目な顔でそんなことを話すと、いきなり笑い飛ばした。そしていつもの調子に戻った。俺はアイツの然り気無い言葉が胸に響いた。
恋愛に未練があるとダサいのはよくわかる。
俺も彼女にフラれた時、最初は未練があった。
二人で撮った写真を破り捨てようと手にかけた時、結局は破り捨てることもできなかった。
心の中でまだ彼女への想いがあったからだ――。
フラれた癖に未練がましいのは自分でもわかってる。でもしょうがない。まだ相手を好きって気持ちが止まらない。簡単に忘れられるぐらいならとっくに忘れてる。でも忘れることが出来ないから、いつまでも心の中でみっともないくらいに相手のことを引き摺ってるしかないんだ。恋愛のタチが悪いのはそこだ。俺はあの時、響子にフラれた一週間は何もできずに無気力になった。そして自分の中で彼女との恋愛に踏ん切りがついた頃、スパッと忘れることができた。
どうしてだろう………。
柏木の然り気無いその言葉に、不意に忘れていた苦い記憶を思い出した。そしてそういう辛い経験をしているのは自分だけじゃなかったと思うと、何も言わずに共感したのだった。
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