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ぶつかった弾みで前を見ると、そこには阿川がいた。あいつは無表情のまま佇んでいた。そしてどこか殺気さえ感じたのだった。あいつは無言で柏木を睨み付けてるようだった。俺はその表情に一瞬息を呑んだ。柏木は何故か俺の掴んできた腕を離した。
「阿川……?」
「……」
俺は思わずあいつの名前を呼んだ。だが、阿川はいまだに柏木の方を睨み付けてるようだった。重苦しい雰囲気に包まれると、俺は2人の前から逃げるようにその場をあとにした。そのあと、2人がどうなったかは見当がつかない。いや、考えないように どこかで思考にフタをした。そしてそのまま、自分のデスクに座って仕事を続けた。パソコンを打ちながらさっきのことが頭の中でループした。
――ついでにあいつに触られたところが、僅かに熱を感じた。
おかしい……。
さっきのことを思い出すと仕事に集中できない。
あいつは嫉妬しやすい性格だから、きっとさっきので勘違いしたのかも知れない。いや、絶対そうだ。でなきゃ、あんな風に柏木を睨むなんて……。
その瞬間、不意にパソコンを打つ指先が止まった。気がつけば仕事どころじゃなくなった。
…ハッ、まさか。考えすぎだ。
俺は柏木とは親友だ。
あいつが嫉妬する理由なんてないはずだ。
嫉妬してるのは、あいつだけだ。
柏木と俺はただの――。
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