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一瞬 感情的になると俺は彼を目の前で苛立った。だか、そのあと冷静さを直ぐに取り戻した。今ここで騒いだら大人げないよなと、自分に言い聞かせて気持ちをグッと堪えた。
「ん、どうした?」
「……いえ、別に。ああ、そうですね。僕、葛城さんの電話番号知らなかったんだった。じゃあ、代わりにお願い出来ますか?」
俺は愛想笑いで返事をすると、その場で自分の感情を殺した。
――柏木さんは、葛城さんの電話番号を知っている。知らないのは俺の方だ。
あんなに近くにいるのに、俺は彼の何も知らない。知っているのは彼の体だけだ。そう思うと急に自分が虚しくなった……。
「阿川、どうした?お前、大丈夫か?」
柏木さんは俺の顔色に気がつくと、少し心配した声だった。その優しさが余計に惨めだった。俺は思わず、気持ちを声に出した。
「教えて頂きますか、柏木さんは葛城さんとは…――」
「え?」
「……あ、いや。何でもないです――」
俺は何を血迷ったのか、自分の気持ちつい声に出してしまった。我ながらには情けなくなると、言いかけた言葉を呑み込んだ。
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