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――ここのところずっとあいつに迫られている気がする。こないだはエレベーターの中でアイツにキスをされた。その前は社内の密室で襲われた。しまいには、あいつは俺と柏木が仲が良い事にヤキモチを妬いている。俺からすれば迷惑な話だ。人が誰と仲良くしようが誰と飲みに行こうか、あいつには関係ないことなのに。
「ッ……!」
ふと思い浮かべると、あいつの言葉が頭に過った。
″あの人には絶対負けませんから!″
アイツのあの言葉がどういう意味なのかはわかっている。きっとそれを知って逃げてるのは俺の方だ。あいつが追いかけてくればくるほど、俺はあいつの気持ちを知っておきながらも卑怯うにも遠くに逃げようとする。
逃げて逃げて、その後に最後は……。
どのみちいつか答えを出さないといけないのに俺は卑怯にも逃げているだけだ。きっと掴まったら後戻り出来ない気がする。本気の恋愛ってやつほど始末におえない。ましてや、同性同士の恋愛なんてものは俺には分からない。今まで男女(ふつう)の恋愛をしていた俺には到底…――。
「本気の恋愛、か…――」
会社の出口の前で佇み夜風を浴びた。もう外は夜だった。今日は久しぶりに残業したから疲れた。帰ったらシャワーを浴びてそれから……。
「葛城さん!」
「えっ……!?」
突然、名前を呼ばれると辺りを見渡した。すると、阿川が自転車に乗っていた。まるで俺を待っていたかのような様子だった。
「あっ、阿川……!? なんでお前…――!?」
「遅いですよ~待ちくたびれました。もうお腹が空いてペコペコです」
あいつはそう言って俺に話しかけてくると、自転車を手で押して近づいてきた。
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