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腹を空かせて項垂れているアイツを連れて、近くの飲食店に入って行った。案の定、ご飯を食べた途端に元気になりやがった。俺はビールを黙って飲みながら目の前のカルビを焼いた。アイツは一人でベラベラと喋って上機嫌だった。
お酒を飲んでるせいか、それとも俺と居るから普段より浮かれているのか、アイツは一人で一方的に喋ったり、浮かれ気味で笑ったりと、明るい反面まるで騒々しいくらいだった。焼き上がったカルビを食べながら黙々と酒を飲んでテーブルに頬杖をつくと目の前にいるアイツを無言で見つめた。
「―――で、俺の推測ですがあの人はきっと二股してるタイプだと思います! でなきゃ、うちの部署にいる吉田さんが彼に二股かけられてるの気づかないだけの鈍感な女ですよ。木ノ下さんは、ああ見えても女性関係派手ですからね。他にも居そうな気はしますが、あの手の男に騙される女も俺は悪いとは思います!」
「ふーん、そうなのか? あくまでも憶測だろ。それに実際二股をかけてる所なんて誰も見てないわけだし。お前の気のせいだろ?」
「あまいな~葛城さん! 木ノ下さんが吉田さん以外の女性から手作り弁当を渡されて、お昼に人気がいない所で食べてるのを同じ部署の女性が見てるんですよ!」
「お前詳しいな……」
「当然ですよ、社内での噂は常に耳に入れとかなかいと話題に乗り遅れます。それに色々と役にたちます。なんでも情報には常に敏感じゃなきゃ、仕事もうまくいきませんよ!」
阿川は酔っているのか、ビールを一気飲みしてテーブルにジョッキをドンと置いた。俺はタバコを一服吸い終わると灰皿に吸殻を押し付けた。
「――情報に敏感か。さすが我が部署の期待の社員、戸田課長もそんな有望な社員が入社して、さぞかし鼻が高いだろうな。でも、お前飲み過ぎだ。悪酔いは体に毒だぞ」
呆れた様子で諭すとアイツからビールジョッキを奪って一言注意した。阿川は「酔っぱらってませんよぉ~!」と子供みたく拗ねるとテーブルに前屈みで頭を押し付けて完全に酔いつぶれた。
まるでどうみても子供っぽかった。普段はキリッとしてる一人前の男なのに。今は俺の前では、まるきり逆だった。呆れて溜め息をつくと、酔いつぶれたアイツの肩を揺すって起こした。
「ほら、寝るな! 起きろ阿川、帰るぞ!?」
「ん~もう閉店ですかぁ? まだ飲み足りないです。もう一軒行きましょーよ! 俺が奢りますからぁ~!」
「バーカ!いい加減にしろ、この酔っぱらい!」
「もう一軒~~!」
「ホラ、鞄持って出口まで歩け!」
「は~~い」
酔っぱらいと化した阿川を無理やり出口まで引っ張って連れていくと、騒いでる奴をほっといてレジで会計を済ました。そして不意に振り向くとアイツが居なかった。
「あれ…? おい、阿川??」
店の外に出ると辺りを見渡した。そしたら阿川は階段の所で踞って気分悪そうにしていた。俺は近くでヤレヤレと呆れると背中を擦って声をかけた。
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