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「お前がよくても俺が困る! 離せバカ!」
アイツに迷惑だと話すと自分の手を振りほどいた。
「葛城さん可愛いな。こんな時でも人の目なんか気にするんですね。俺は全然気にしませんけど。それに俺はいつだって――」
「ッ……!」
いきなりアイツは俺の方を見つめてくると真剣な眼差しで見てきた。その視線に一瞬、ドキッとなると体が急に熱くなった。
「そんな目で俺の事をみてくるんじゃねーよ。お前のせいで、俺は…――」
「すみません気をつけます。あ~あ。ビールもう一本、飲んじゃおーかな!」
「お前それ以上飲んでどうする!? いい加減にしろ!」
阿川は俺が止める間に飲み干した缶ビールを近くのごみ箱に捨てると、次のビールをレジ袋から取り出すなり、フタをあけるとクビクビ煽るように飲んだ。
「あ~あ。俺は知らんぞ、俺は。それ以上飲んで酔っ払っても介抱なんか絶対してやらないからな!」
「またまた~。俺は知ってるんですよ、葛城さんの優しい所を。口では厳しく言っても、本当は根は優しい人だって事を! 世界中の誰よりも、俺が葛城さんの事を知っています!!」
阿川は酔いが回っているのか、上機嫌で大きな声で話すと噴水広場の前でハシャギ始めた。俺は耳まで赤くなるとその場で怒鳴った。
「お前声が大きいんだよ! 今夜中だぞ! いい加減にしろこの酔っぱらい! 頭を冷やせ!」
「わっ…!?」
カッとなるとアイツの背中をドンと叩いた。すると阿川は噴水の中に足を滑らして中に落ちた。そしてずぶ濡れになった。内心しまったと思いながらも、あまりのマヌケぶりに思わず笑いが込み上げた。
「ッ、アハハハハハハハッ!! バカだなお前、事故自得だ! 頭から水を被ったから少しは酔いが覚めたんじゃないのか?」
阿川は呆然と水の中に浸かって、半笑いを浮かべていた。そして、ニコっと笑うと手を差し伸べてきた。
「ええ、貴方のおかげで酔いが覚めたかも知れません」
「少しは懲りたか?」
「はい。ダメですね、飲みすぎは」
「そうだろ。じゃあ、さっさと噴水の中から出てくるんだな。風邪ひくぞ。」
「あの、手かしてくれませんか? 酔っ払って足がうまく動かなくて」
「まったくだらしないな。ほら、さっさと起き上がれ!」
「ええ、今すぐ……!」
『わぁっ!!』
思いっきり手を引っ張られると、そのまま体勢を崩して噴水の中に落ちた。そして俺までずぶ濡れになってしまった。アイツは俺の方を見てくるとケラケラとおかしそうに笑ってきた。
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