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「教えて下さいよ。俺の事心配してくれたのは、俺が貴方の「後輩」ですから?それとも、「俺」だからですか? 俺の気持がちわかるなら貴方の口から教えて下さい」
「ッ…阿川」
「俺は貴方の気持ちが知りたいだけです。でないとこのままじゃ、おかしく――」
「おい、阿川! 戸田課長が呼んでるぞ!?」
不意に萩原が入ってくるとアイツに掴まれた手を慌てて振りほどいた。阿川は口を閉ざすと、悲しげな目で俺の事を見てきた。その悲しげな瞳に胸の奥がチクッと刺すように痛くなった。
「あ、わりぃ…! 2人で話し事か?」
「ん? ああ、ちょっとな……」
「俺、お邪魔だったかな?」
「何言ってるんだよ萩原。阿川がちょっと酔ってるんだよ。な?」
「……萩原さんタイミング良すぎですよ。俺の邪魔してますか?」
「えっ?」
阿川は萩原の方を見るとニコッと笑いながらも目は笑ってなかった。咄嗟に萩原の背中を押すとその場から退散しようとした。
「さあ、戻るぞ萩原! 一緒に飲むぞ!」
「ん? ああ、そうだ! 戸田課長からさっきチップ貰ったんだ! お前の分もあるぞ!?」
「見た。鼻に割り箸刺してドジョウすくいやった甲斐があるな」
「まーな! 戸田課長はムカつくけどチップだけは、気前がいいからな!」
「ハイハイ」
その場から逃げるように萩原を連れて出て行くとアイツを一人置き去りにした。そして、席に戻ると何食わぬ顔で柏木と萩原と3人で世間話しをした。さっきの事を考えると自分の気持ちが乱れそうになった。
――“貴方の気持ちが知りたい”――
アイツのバカ真っ直ぐ過ぎるストレートな言葉に俺の気持ちは揺れていた。平静を装っても心の中ではアイツに対しての気持ちに答えを探そうとしていた。でも、いくら考えても簡単に答えは出せなかった。一瞬、我を忘れると持っていたグラスをテーブルの上に落とした。
「葛城、何やってるんだよ…――!?」
「あ…。すまん、ちょっと手元が狂った」
「なんだ? 酔ってるのか? お前大丈夫か?」
「ああ、ちょっと……」
少し顔が赤くなると酔いが回っていた。ボーッとした顔で然り気無く阿川の方を見た。アイツはいつの間にか自分の席に戻っていた。そして、平然とした様子で戸田課長の相手をしていた。
「大丈夫か、信一? ほら、肩貸してやるから少し休んでろ」
「ん…すまん。でも、大丈夫だ…――」
ボーッとした顔で返事をした。柏木が俺の肩に後ろから手を回すと、自分の方にグイッと引き寄せてきた。一瞬「え…?」と思った。
「ほら、少しは楽になったろ?」
柏木に左の肩を抱かれると、それを近くで見て居た女子達が急に騒ぎ始めた。
「やだ~! 柏木さんと葛城さんったら、なんだか2人とも怪しい~!」
「コラ! お前達、茶化すなよ! これだから女子達は…! 懐抱してやってるだけだ! 誤解するなよな!?」
「キャ~! 懐抱だって~!」
女子達は面白がって騒いだ。頭は酔っていても、さすがにマズイと思った俺は、直ぐにアイツの手を振りほどこうとした。すると近くでグラスを倒した音がした。視線を向けると阿川は驚いた表情で俺達の事を見てた。一瞬、胸がドキッとした。アイツは俺達を見ると傷ついた目をした。その様子にさすがの俺も酔いが目が覚めた。阿川は悲しそうな瞳をすると顔を反らした。
「……阿川」
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