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葛城はコピー室で一人いた。無音の部屋の中、機械の音だけが鳴った。そしてカタカタとコピー機は、静かに音をたてていた。彼はコピー機の取り出し口から出てきた紙をとるとフトため息をついた。
彼の頭に浮かんだのは、さっきのことだった。彼女に自分が「笑顔がない、気難しい人」だと指摘されたことがダイレクトに心に響いた。自分でも解っていたことだがそれを他人から言われると、ただため息ばかりをついた。
「笑顔がない……か、どうせ俺はあいつみたいに、素直じゃないさ。むしろそんなこと他人から言われなくても解ってることだ。どうせ俺は…――」
心の声を口に出すと彼はコピー機の前で両手をついて下をうつ向いた。そして何気無く笑って見せた。
一瞬、作り笑いの笑顔をしてみた。だけど自分の中で違和感を感じると直ぐに止めた。
……バカか。こんな笑顔なんか無理やり作って、どうせ俺には笑顔なんて無理だ。あいつみたいに笑って生きていける人生ならどんなに楽か……。どうせ俺は気難しい人間だし、人好きあいも下手な方さ。愛想振り撒けていけるならとっくにしている。どんなに頑張っても俺はあいつみたいになんか…――。
その瞬間、自分が惨めに感じると深いため息が口から漏れた。
……阿川の奴、女達に囲まれてたのしそうだったな。確かにあいつはうちの部署じゃモテる方だが、何だあの感じは?
どの女にも愛想を振り撒いてヘラヘラして。俺が近くにいるの知っていてやっているなら、なんかムカツクな。だいたい女達にチヤホヤされて鼻なんか伸ばしやがって、なんか腹立つ。
女達はあいつの中身を知らないだけだ。
あいつは中身はエゲツない男だぞ。
俺に好きだとか言って、迫ってくるような男だ。
ついでに無理やり抱くような男だ。いつも勝手で強引で俺の中に土足でズカズカ入ってくるような……。
葛城はコピー機の前で一人、阿川のことを考えていると急に切ないため息をついた。そして気がつくとコピー機の取り出し口には、出てきた紙が何枚も重なっていた。しまったと思い、急いで出てきた紙を回収すると、葛城はいかんせんと自分に呟いた。
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