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えっとぉ…うんとぉ…
頭の中をひっかき回し、やっとやっとあこ先生が教えてくれたその言葉を思い出したボク。
「…ねっ…ねっ…ちゅうしよう…?」
1人でお留守番をする時に暇つぶしになるだろ?って廣瀬さんが買ってくれた、猫さんのパズルがぴったんこではまった時みたいに、すっきりと口に出した言葉。
本当はね、黒と白のぶちぶち猫さんのパズルの方が簡単でいいよって廣瀬さんには言われたんだけど、
ボクはどうしても真っ白な猫さんパズルが良くてそっちにしたの。
真っ白でタンポポの綿毛みたいにふわふわで…スノーくんみたいにかわいい猫さんパズルは・・・
だけどとっても難しくって全然進まないんだ。
朝廣瀬さんがお仕事に出かけて夜帰ってくるまで1人で夢中になってやっても、1つしかぴったんこが見つからないくらいすごーく難しいんだよ。
でもそのぶん、ぴったんこが見つかるととってもとっても嬉しいし、すっきりするんだ。
まだちょっと自信がなくて、ちょぴっと小さい声にはなっちゃったけど・・・大切な言葉をやっと思い出せてお胸の中がすっきりしていた。
だけどね・・・ボクがそう言った瞬間、どうしてかな?廣瀬さんはかっちこちのロボットみたいに固まっちゃった。
廣瀬さんはかっちこちのロボットのままボクを見ている。
「・・・おまえ・・・今なんて言った?」
あれ?
あれれ??
ねっちゅうしよう・・・違ってたかな?
『海くん、自分に自信を持って!!!』
恥ずかしくって真っ赤になりながら廣瀬さんを見上げていたボクの頭の中に、突然聞き慣れた声が響いた。
国語の本読みの時、
かけっこでよーいどんの位置に着いた時、
朝の会のご報告でみんなの前に立った時、
どきどきのきんちょーでモジモジするボクに、いつも大きい先生がかけてくれる言葉。
普段はふざけてばかりの大きい先生でも、この言葉を言う時はとっても真剣で、
この言葉はなぜだかボクに勇気をくれる。
真っ赤かのほっぺのまま、それでもボクは廣瀬さんを真っ直ぐに見上げもう1度繰り返す。
今度はさっきよりはっきり、
さっきより大きな声で。
「……ねっちゅうしよう…です!!」
何度も何度もお胸の中で繰り返したんだ。
絶対忘れちゃメの印の線だって、ちゃんと赤えんぴつで引いた。
海、自信を持って!!!
「…ねっ…ちゅうしよう…」
ボクはもう1度言う。
かっちこちロボットの廣瀬さんを見上げ。
「ん゛ンっ・・・!!・・・おう・・・」
まだ夢の中にいるみたいにぼーっとしながらも、廣瀬さんはもごもごと言って頷いた。
・・・・よかったぁ。
『ねっちゅしよう』ちゃんと廣瀬さんに伝わった。
安心してにっこり笑ったボクに廣瀬さんも大きく頷き、何故だかきょろきょろと周りを見渡す。
あのね、
ねっちゅうしようって、すごーく怖い病気なんだよ。
頭がぼーっとして足がふらふらになっちゃうの。
ひどい時は死んじゃうこともあるんだって。
あこ先生に聞いたことを廣瀬さんにも教えてあげなくっちゃ。
ふぅ~・・・
大切なお話の前はまず深呼吸。
心を落ち着かせる深呼吸をしてからしっかり頭の中を整理整頓し大きなお口を開けた瞬間、
お隣の椅子から身を乗り出すようにした廣瀬さんがボクの肩をぐぅっと引き寄せた。
「・・・だよなぁ・・・俺が欲求不満って事は、おまえだって一緒なんだよな・・・悪かったな、気付いてやれなくって」
廣瀬さんの声はとってもとっても優しい声だった。
それはまるで『海、好きだよ』
って言ってくれる時みたい。
よっきゅ…ふんまんって・・・・なに?
・・・・・・・どうしてごめんなさいするの?
廣瀬さんの優しい声にぼんやりしながらもそんなことを考え始めた頃、
今度は廣瀬さんのお顔があっという間にすぐ側に・・・・。
そうして肩を掴まれたまま、廣瀬さんのお顔とボクのお顔は正面からぶつかってしまった。
ううん。
正確にはお顔がぶつかったんじゃない・・・・
ぶつかったのはお口。
これって、
これって、
ちゅーだ!!!!!!!!
ボクの頭の中はもう真っ白け。
ねっちゅうしようの大切なお話も、
お気に入りの水筒のことも、
つばの広い麦わらのお帽子ことも、
全部全部どこかに飛んでいってしまっていた。
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