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「あぁ~、マジで今日は妙に疲れたなー」
廣瀬さんはそう呟くとボクがぼんやりさんしている間に、ささっとベッドに潜り込んだ。
お家に着くなりもう何度もこの言葉を繰り返している。
1・・・2・・・3・・・4・・・?
ボクが覚えているだけでも4回は言ってるよ。
お仕事やお勉強会、それにクマ太くんに食べられそうになったりで、たぶん今日は本当にとっても疲れているんだと思う。
いつもならどんなに疲れていてもにっこり笑顔でお料理してくれる廣瀬さんが、あまりにもお疲れさまのへとへとだからか、柊学園からの帰り道にコンビニに寄って夜ごはんのお弁当を買ったくらいなんだもん。
『うみぃ~、ちゃんと栄養つけさせなきゃいけねーのにごめんなぁ。今日はこれで勘弁してくれ』
って、ボクにごめんなさいするの。
廣瀬さんが作ってくれたごはんが1番美味しいけれど、お弁当だってとっても美味しいよ?
だからごめんなさいする事なんてないのに・・・。
それにボク、5ミリも背が伸びてたんだ。
これって毎日栄養満点のごはんをたくさん食べさせてもらってる証拠だよね?
でもね今日はコンビニのお弁当だけど、久しぶりに月曜日は廣瀬さんのお仕事が1日中お休みだから、とびきりの美味しいごはんを作ってくれるんだって。
だからなにが食べたいかボクが決めなきゃいけないんだ。
ハンバーグにカレーライス…オムライスにスパゲッティ……
廣瀬さんの作ってくれるごはんはどれも美味しいから、なかなか1番を決められないの。
「なにボーッとしてんだよ。おまえも早くベッドに入れ」
ベッドの脇でうみを抱えたまま『1番食べたい物』をぼんやり考え突っ立っていたボクを睨み付け、
廣瀬さんはふぁ~~と大きなあくびをする。
「…あ…はい…」
今にも寝ちゃいそうな声で急かされ、ボクは大急ぎでうみを抱っこしたまま廣瀬さんのお隣に潜り込む。
「こいつジャマ」
「あ・・・うみ・・・」
ボクの腕からうみを取り上げ、頭の上に除けてしまう。
・・・ごめんね、うみ。
廣瀬さんの抱き枕をするのはボクの大事なお仕事なんだ。
ボクを抱っこして眠ると、廣瀬さんはとってもよく眠れるんだって。
だから我慢してね。
「んぁ~、いい匂い・・・すっげー落ち着くわ」
頭の上のうみそっちのけでボクだけをしっかり抱えた廣瀬さんが、くるくるの髪の毛をくんくんした。
いつものことなんだけれど、そうされるとボクのお胸はとってもくすぐったくなるんだ。
・・・なんだかちょっぴり恥ずかしいの・・・
でもね、それが不思議といやじゃない。
くすぐったくて恥ずかしくてどきどきするんだけど、それと同時にお胸の中はぽかぽかになるんだ。
「・・・今日もぐっすり寝れそっ」
廣瀬さんにそう言って貰ったのが嬉しくて、ボクはさっきまでうみを抱えていた時みたいにしっかり廣瀬さんのお背中に手を回しぎゅーっとしがみついた。
ついでのついでにお胸にお顔をぐりぐりと押しつけると、ボクの大好きなお日様の匂いがする。
「おまえも眠いだろ?明日は学校休みなんだから朝ゆっくり寝ててもいいぞ」
そんなのだめ!!
廣瀬さんの言葉に慌ててぶるるんとお顔を振った。
明日は土曜日。
柊学園はお休みでも、廣瀬さんのお仕事はお休みじゃないんだ。
ボクだって朝いつも通りに起きる廣瀬さんと一緒に起きて、お料理のお手伝いをするんだ。
それに一緒にお顔を洗って、玄関までお見送りだってしなきゃいけない。
絶対にお寝坊さんなんて、してはいられないんだ。
・・・だって・・・だって・・・
いってらっしゃいのお見送りをしたら、ボクと廣瀬さんはまた夜までバイバイしなきゃいけないんだもん。
お留守番している間に廣瀬さんメーターがすっからかんにならないよう、たっぷり甘えん坊しとかなきゃ。
「…ボク…廣瀬さんと一緒…起きます……それでそれで…いい子…お留守番…します…」
「んー・・・そっか?」
「…はい…一緒…起きます…」
廣瀬さんにしがみついたまま、ボクは小さくぴっとお背中の方で手を挙げる。
お返事する時は出来るだけ大きな声ではっきりと『はい』って言って手を挙げましょう・・・これは小学生の頃に習った事なんだよ。
「・・・でさ、お留守番で思い出したんだけど・・・今日ほどじゃねーけど、明日もちょっと帰り遅くなりそうなんだわ」
「・・・・え・・・?」
「ほら、新しいパーマの機械が入ったって言っただろ?まだお客さんに使うのはちょっと不安だから・・・色々勉強しねーと」
「…お勉強…?…」
お勉強、お勉強、お勉強・・・・・・
しかたない、しかたない、しかたない・・・・
お胸の中で何度も繰り返し自分自身に言い聞かせる。
ボクは咄嗟に出そうになった涙をごっくんして、ほっぺをひくひく揺らした。
うっすらしか電気の灯っていないお部屋じゃ見えないかもしれないけれど、それでもボクは下手っぴに笑って見せる。
「…明日…廣瀬さん…お仕事のお勉強…夜…遅くなります…でも明後日…日曜日…。
…廣瀬さん、お仕事…ちょびっとだけ…早く終わります…だからボク…平気…」
平気・・・は嘘だけど、でも大丈夫。
日曜日はいつもより廣瀬さんのお帰りが早いから、たくさん甘えん坊出来る日なんだ。
2人でごはんを食べて、たくさんお喋りして、お膝に乗ってお胸にすりすりして・・・そうしている間に廣瀬さんメーターはすぐにいっぱいになるから。
だから明日なんて、すぐに終わるよね?
・・・うん・・・だから大丈夫なんだ。
そう思えたのも束の間…廣瀬さんはやっと引っ込んだボクの涙が、また溢れそうになっちゃう一言を言ったんだ。
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