アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
初めの約束
-
*******
ミーンミーンミーンミーン
「お母さんじゃあ学校行ってくる」
『気を付けるんよ!』
強い日差しが照りつける、遠くを見れば微かな揺らぎが目に見えるほどの猛暑のなか、そんな母の言葉を背中で受け止めながら玄関のドアを叩くように飛び出していった。
俺は今12歳の小学生。
名前は安河内 早苗(さな)
当然だが生別は男
え?なんでこんな当然の事をふるかって?
名前が女らしいというのもあるのだが…
一番の理由は学校につけば分かる
******
キーンコーンカーンコーン
(あついなーもぅー)
猛暑のせいか…歩くのが遅いせいか…遅刻ギリギリでチャイムと同時に教室に入っていった。汗だくで疲れていた俺に飛びかかるようにあいつらがやってくる。
『 よぉーぽちゃぽちゃ!』
『今日の朝もたくさん水のみすぎたんじゃねーの?笑』
『おばさんみてーな体だー!ぎゃははは、水がたくさんでてんぞーくっせー』
(だから暑いのきらいなんだよ)
ぬぐいきれない汗と自分の抱えていた不満を押しこらえて席へとついた。
「だからなんだよ…もう!」
そんな俺の反応にその三人組は、クスクスと笑いながら自分の席へと座った。
この三人が原因だ。
ちなみに俺、あだ名はいつも[ぽちゃ]とよばれている。
だいたいはその名を聞けば俺のコンプレックスが分かると思うのだが…
こんなこと自分の口からいうことさえ出来ない。それくらい俺は根に持っているのだ
こうやって、回りの人から言われるようになったのは小学校一年生の頃からだった。
そのころから自分は体型が少しぽっちゃりしてしまっていたので……というより産まれたときから重かった、とお母さんが言っていたような気がするのだが…。
それに加えて俺は性格がとても厄介、気が強くて相手が言ってきたことに対してカッとなって言い返す性格なのだ。
それが原因でこんな言われるはめになってしまっていた、
そんなかんじでいつも俺はそう、見た目はこんなんで身長もみんなより一回り小さくて肌も白くて…友達もまともにいなくて…性格も悪くて…ほんと悪魔だ
******
♪~
帰りの下校の放送と音楽が流れ始めたとき俺はようやく帰りの準備を終えた。
今日も一日大変だった、地獄だった。なんて思わなかった…それはそうだ、こんな生活長くしていれば慣れてしまうものだから。。
教室はどこもがら空きで俺はたった一人教室の戸締まりを終えて職員室へ鍵を返しに行った。そしてそのまま来たあとを辿るようにうちに帰っていった。
校門を出て回りに誰もいない事を確認した俺はなんとなく好きな歌を口ずさんだ。
「“あいのーなかにうまーれた僕たちーはー、一生に決めた~約束をー唄う~“」
木の棒を片手に振り回しながらただひたすら歌を唄う。この歌はお母さんが教えてくれた歌…なぜかはわからないが疲れたときや自分が追い込まれたときに落ちつける歌なのだ。
結構な大声で叫ぶようにうたっていたせいかすこしづつ自分の声が枯れていく
『ふはは、変な歌…』
「っな!誰だお前」
後ろから声がしたと同時に片手の木の棒を突き立てるように無意識に相手に向けてしまっていた。さっきは後ろに人なんていなかった…
そして知らない人にこんな姿を見せてしまっていたことに焦ったというよりも、羞恥心が一気に込み上げてくる。
『あ、うんうん!違うんだ…バカにしてるとかじゃないよ、とてもいい歌だと思う』
「っへ…?」
片手に握りしめていた棒をポロリとおとしてしまった。今の俺の態度になんの動揺もなく笑顔で…
まさかどこかであったことあるのかな…
いや…そんなはずは…それだったら名前をしってるはず…
『あ、落としましたよ、はい。どうぞ、それじゃあ僕はこれで』
呆然と立ち尽くす俺に落とした木の棒をそっと拾い上げて手元に置いてそのまま横を通りすぎていった。
同じランドセルをからっていたが、あれは他校の…
それに白色のランドセルに制服を着ていた。俺と違って賢そうな子だった…そして爽やかだった…
って男ぼれというものなのかこれは。
まぁいいか…
どうせ会うこともないだろうしこのまま帰ろう。
そうして俺は何事もなかったかのようにまた帰り道を辿って帰る
さすがにあまりの羞恥心を味わっていたので唄うことはやめてしまっていた。
*****
(さっきのこ…かわってるよなぁ)
無意識に木の棒を 道路の白線に辿らせていると
キラリと光るなにか輝いているものが棒の先端に触れた。
「なんだこれ…綺麗だなぁー」
それをそっとすくいあげる。それにしてもとてもきれいなものだ…
見た目からしてキーホルダーのようにも見える。それはいかにも大人が持っていそうな物だ…
なぜかごくりと唾を飲み込んだ俺はそのキーホルダーをそのままにしておくのもできないまま回りを見渡しながらポケットにそれをそっとしまいこんだ
これ…気に入ったかもしれない…
初めの約束、拾ったものは落とし物箱へ。
→next
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
1 / 2