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何故、僕はまたここへ来たのか………。
扉の前で、僕は創のいるこの部屋にこのまま足を踏み入れていいものなのかを逡巡し、ドアノブに手を伸ばすことを躊躇われた。
キィ………………。
軋んだ音を微かに立てながら、不意に扉が開かれる。
「やあ、メリ………来ると思っていたよ」
にっこりと優しく微笑まれ、腰を抱かれるようにして部屋の中へ招き入れられる。
「創………」
「すっかり寝る前にメリとこうして話をするのが日々の楽しみになってしまって………おいで、今日は何を話そうか………」
そうして、僕にとって何の意味もないと思われる話を今日も繰り返す。
屋敷には慣れたか、次郎とは仲良くやっているか、食事はきちんと食べているか、勉強は好きか、困っていることはないか………………………。
僕はその全てに「否」とも「応」ともつかない曖昧な答えを返す。
そうして頃合いを見計らって、創は僕に自分の寝床へ戻るように言い、それに従い僕は素直に辰五郎と鉄太の居る部屋へ戻る。
朝を迎え、次郎について食事と割り振られたお屋敷での仕事をこなし、風呂に入って夜中には創の部屋へ行く………。
そんな日々が続いた。
「メリは、ここへ連れて来られたことを後悔しているかい?」
「メリは、幸せ?メリにとっての幸せとは、なんだい?」
創の部屋へ毎夜通うようになって、僕を部屋へ戻す前にこの2つの質問をするのが最近の創の日課になりつつある。
それに対する僕の答えはいつも同じ。
「わからない」
「わからない」
………わからなかったのだ。
何せ僕には『幸せ』という概念がない。
『幸福』を知らないが故に、今までの自分が不幸であったことにすら、気付けていなかったのだから………………………。
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