アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
7
-
愛情は、無かった………無かった筈だ。
父は僕を憎みこそすれ愛する理由はなく、ともすれば僕に対する愛情があるわけが無いだろう。
けれども僕は、母の故郷に送られることも、外聞の為か捨てられることもなく父の家で育てられた。
一歩も家の外に出ることはなく、ひた隠しに世間から隠し隔離され、僕はその家で育てられた。
しかし人の口に戸は立てられぬ………母の出産に立ち会った者からか、はたまた家に出入りする者からか………とにかく異国人の子供の噂は瞬く間に広がった。
僕が、3歳の時のことらしい。
一人の男が、家を訪ねて来たそうだ。
「御免くださぁい………こんにちは」
表情だけはにこにこと、けれど心に何かを隠していそうな気味の悪い男………えらく抑揚をつけ、少し語尾を伸ばして喋るのが耳障りな小男。
「ちょ~っと、面白いお話を小耳に挟みまして………」
どんなやり取りをしたのか、僕は詳しくは知らない………けれども、父はそいつにあっさりと僕を託した。
平均の成人男性よりも身長の低いとても小さな体にクラウン部分がひときわ高い山高帽子、燕尾服に少し大きめの蝶ネクタイをキッチリとつけたその男………見世物小屋の主人に僕は人ではなく商品として、引き取られた。
明治23年、西暦1890年のことだ。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
8 / 93