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プロローグ
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「秋月、付き合ってよ」
県立七山(ななやま)高校。
山と海にほど近い最寄りの駅から徒歩十分。
小高い山を背負うように建つ白い校舎。
校門を入るとL字型のロータリーが昇降口まで続き、そのL字が校庭である広いグラウンドを抱いている。
廊下に出ると視界一面に広がる木々は、否が応でも季節の移ろいを感じさせる。
教室の窓からは遠くに海が見えて、晴れた日には空と海の境界線が曖昧だ。
ここに通い始めて二度目の春、高校二年生になってすぐの事だった。
凍えるような寒さはなくなり、日もいくらか伸びてきた。
春はまだ青く、優しく吹く風がほのかに花の匂いを運ぶ。
いつもの部活帰り、いつもの道。
近所のコンビニの店員が無愛想だとか、学食のメニューについてだとか、脈絡なくコロコロと変わる話題の中で、脈絡なく向けられた言葉。
「どこにですか?」
そう答えた自分はきっと間違っていない。
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