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うちの高校の運動部員はこの店が行きつけのようだ。
クーラーの効いた店内。
暑さからの解放にほっとする。
広くはない店内にずらりと並んだスポーツ用品。
緒方さんは迷うことなく陸上関連のコーナーまで歩き、そこでもずらりと並んだピンの中から迷うことなく目的のピンを手にした。
「秋月はタータンピン持ってる?」
「中学の時のがありますね」
「物持ち良くない?」
「中学でタータンって大会でしか使わなかったから、全然減らないんですよ」
緒方さんはなるほど、と相づちを打った。
「秋月はなんも買わないで平気?」
「はい、特には」
「じゃレジ行ってくるから待ってて!」
そう言ってまた迷うことなくレジへと向かって行く。
だいぶ手馴れた様子だ。
連れてこられた意味のなさを感じながら、色とりどりに並ぶ靴紐の中から、晴れた日の空に近い色のものを手にする。
「それ欲しいの?」
急に後ろから声を掛けられ、身体がびくりと跳ねた。
「いや別に…」
慌てて靴紐を戻す。
店を出るとまた、昼間の太陽に熱せられた空気が身体にまとわりつく。
緒方さんの家は自分の使うバス停に近いので、そのバス停まで一緒に歩く事となる。
バスが来るまで待ってくれると言う緒方さんの話題のタンスは開け放たれ続ける。
緒方さんの凄い所はそのタンスの大きさだけではなく、合間にあちこちから興味を拾ってくるところ。
目の前を虫が飛べば虫の話。
その最中に猫の姿を見かければ猫の話。
ペットボトルが落ちていれば、子供の頃に親のビールを味見した話が飛び出し、その最中に関連ワードで更に話は変わる。
どこかから美味しそうな匂いでも漂ってくれば、また新しい引き出しを開ける。
まともに聞いていたら、頭の中が混乱してしまいそうになる。
いくらか混乱し始めた頃、バスのヘッドライトが近づいてきた。
「付き合ってくれてありがとな!」
嬉しそうな笑顔に見送られ、頭を下げてバスに乗り込んだ。
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