アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
7
-
校門を入ってL字沿いにある体育館脇を通ると、二階建ての古びた建物がある。
鉄製の階段を登り手前から二番目、そこが男子陸上部の部室だ。
部室では既に井上さんと瀬川さんが着替え始めていた。
「おはようございます」
「おーす。今日もあっちぃなぁ」
まだ朝といえど夏本番。
窓は開け放たれているものの、部室内は既にだいぶ蒸している。
ロッカーを開けるとヒヤリとした空気が指先に触れた。
突如緒方さんが、あっ!と声を上げた。
「秋月!帰りアイス買いにコンビニ寄ろ!」
「もう帰りの話ですか」
「おう!ご褒美あった方がやる気が出るだろ?」
白い歯を見せてにっと笑った。
「まぁ…そうですね」
と応えつつ、正直あまり理解はできない。
「ねぇ、なんで秋月だけ誘うの?俺は?」
パンツ一丁で恨めしそうな表情を浮かべ、井上さんがずいっと緒方さんに詰め寄った。
「え、だって俺秋月好きだもん」
長椅子に座りペットボトルに口をつけていた瀬川さんが盛大に吹き出した。
「瀬川きったねー」
山梨さんが指をさしてうひゃひゃと笑った。
「いやいや、吹き出しもするでしょ」
口元を拭いながら瀬川さんも笑った。
「秋月固まってるし」
山梨さんの声ではっとする。
練習着に着替えようとズボンを下げ掛けたまま、手が止まっていた事に気がつく。
自分にも好きな友達はいる。
居心地が良かったり楽だったり。
ただそれを面と向かって言った事はないし、言われた事もない。
「じゃあ緒方は俺の事好きじゃないの?!緒方のばーか!」
「はぁっ?!井上は何言っちゃってんの?!好きに決まってるだろ!ばーか!」
真顔で見つめ合い、ひしっと抱き合う二人。
「見てるだけで体感温度上がるわ。そんな目で見るなんて秋月もまだまだだな」
「……まぁ…はい。色々ついていけなくて…」
「奇跡的なお馬鹿が奇跡的に二人もいるからね」
自分は一体どんな目をしていたのだろうか。
いつも冷静でいられる自信が多少なりともあったが、顔に出ていたのかもしれない。
「秋月、とりあえず履くか脱ぐかしろよ。バカに襲われるぞ」
「あ、すみません」
「え?秋月襲われそうなの?!大丈夫だ、俺が守る!」
「緒方うるせー」
「やだ、脱げだなんて山っちえっちっち!」
「井上ももうそろそろ黙りな?朝からセミか井上か緒方かってくらい暑苦しいからね?自然に還すよ?」
「瀬川その笑顔こわっ!」
窓から湿気を孕んだ風が舞い込んだ。
今日も暑い一日になりそうだ。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
8 / 1191