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「どこが、とかじゃねぇもん。だからなんでかって聞かれたら分かんねぇ」
「うわ…ガチで惚れてるじゃん…」
「秋月かわいそ…」
「山梨それ二回目!」
カタンとロッカーの閉まる音。
「俺だって望みなんてないの分かってるし。でも何度考えても諦められなかったから、だったら伝えないと何も始まらないだろ」
昨日より幾分か冷静さを取り戻していたはずの頭が、再びショートしたような感覚。
「秋月?」
急に背後から名前を呼ばれ、自分でも驚く程びくりと身体が跳ねた。
「わ、渡辺さん…」
「どうした?入らないのか?」
「あ、いえ」
「顔が赤いぞ?」
「いやっ、そんなことは」
「目も赤いな。寝不足か?」
軽く首を傾げた渡辺さんにじわじわと心理を暴かれていくようで、慌ててドアを開ける。
心の準備もできないままにドアは騒音に近い音を立て、思った以上の勢いで開け放たれてしまった。
部室内の視線が一斉に自分に集まった。
「おっ…は、ようございま、す…」
「あ、秋月来た」
「秋月っ!渡辺と一緒に来たの?!」
なぜか泣きそうな顔で緒方さんが叫んだ。
「いや、秋月が部室の前」
「いやっ、俺は別に」
「おっはーって言った!聞いたか皆の衆!秋月がおっはーつったぞ!」
否定をしようとした渡辺さんを更に否定しようとした自分の言葉が、メガネを掛けた井上さんの声によってかき消された。
(助かった…ありがとうございます井上さん)
感謝しつつも、とりあえず井上さんの言葉は否定する。
「そんな事言ってません」
「いや聞いた!俺は今!確かにこの目で!」
「目で聞いたってなんだよ!そのメガネどうなってんだよ!」
「すげぇ!井上そのメガネどこで買ったの?!」
「地元の駅ビルだぜ緒方!秋月おっはー!」
「井上その眼鏡叩き割るよ?」
「やめて!お値段ニーキュッパ!秋月おっはー!さぁ皆さんご一緒に!」
「地味に高けぇ!」
「よしダメだね。眼球潰そうか」
もう誰が何を言ってるのやら訳がわからない。
「お前らうるさい!」
渡辺さんの喝が飛んだ。
「ったく…俺は秋月が部室の前に立ち尽くしてたから」
「やっ!違っ…」
流れたと思った話しを戻されてギョッとする。
立ち聞きしてたのを知られるのはマズイ。
だが慌てて否定をするも時すでに遅し、といったところだろうか。
メガネをクロスで磨き始めた井上さんと、その井上さんのメガネを羨ましそうに見つめる緒方さんを除いた全員の顔に、うわぁ…と書いてある気がする。
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