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「あの…緒方さん…?」
ぎゅっと手を握られた。
(……!!モザイク!)
「昨日はごめん…」
急に低くなった声にギクリとする。
「別に困らせるつもりじゃなくて…なんつーか…男同士でとか…気持ち悪いよな…」
緊張しているのだろうか。
握られた手が熱い。
視線を上げないまま、らしくもなくぼそぼそと呟いている。
どうしたものか。
「俺の思考回路は考える事を放棄しました」
なんて言えるはずもない。
嫌いではない。
むしろ憧れているし、尊敬している。
でもそういった意味で特別視した事はもちろんなかったし、部活の先輩だし、しかも男。
放棄されたこの思考回路では、単純にどうしたらいいのか分からなかった。
「あっ!いた!緒方!」
そう言いながら階段を降りてきたのは、緒方さんの担任の先生だった。
「お前昼までに課題持って来いって言っただろうが」
「やべ!教室に置いたままだ!」
「ったくしっかりしろよ…ってお前ら」
先生の視線が下がり、掴まれた手で止まった。
「……なに?プロポーズ?」
ニヤニヤと笑う先生。
「違っ…!」
慌てて手を振り払う。
「俺はプリントを受け取ろうとしてっ…」
あはは、と先生は声を上げた。
「わかってるって!冗談冗談!いやー秋月もそんな顔するんだなー。緒方に気に入られた奴は大変だな」
「先生、それどういう意味ですか…」
ぷくりと頬を膨らませ、緒方さんが恨めしそうな目を向けた。
「子供か!とにかく早く持ってこいよ。単位やらんぞ」
「はい!すぐに!」
敬礼のポーズをした緒方さんを見て、先生はまた声を上げて笑うと背を向けた。
「じゃあ俺も行くな!また部活でな!」
今度こそ差し出されたプリントを受け取ると、緒方さんは来た時と同じようにバタバタと走り去っていった。
失敗したかもしれない。
手を振り払う、だなんてあからさまな態度を取ってしまった。
(気まずくなったらどうしよ…)
どっと疲れた気がする。
思考回路をなんとかしないといけない状態に、もう一度、今度は深くため息をついた。
午後の授業が終わり、先ほどの危惧など無意味なほど、なんともあっけなく部活も終わった。
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