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「五歩…ですか」
「おう!五歩だ!それで一本跳んでみろ!」
100m単位の距離を走るトラック競技と違い、助走でしか走らない高跳びという競技において、五歩というのはとても大きな距離だ。
今までにない大幅な助走位置の修正に不安を抱きながらも、言われた通り五歩下がった位置につく。
バーまでがやけに遠く感じる。
息を吐き走り出す。
やはり五歩の差は大きい。
違和感を感じる程確実に遠い。
踏み切る。
(……あ…)
マットに落ちる。
「おおおっ!」
また一年生から歓声が上がった。
思わず慌てて顔を上げ、緒方さんの姿を探す。
「どうよ?」
とでも言いたげな顔で緒方さんが近づいてきた。
「……いつもより踏み切りが楽でした」
「だろ?」
ニヤッと笑った。
「一年の時より筋力ついただろ?秋月は加速に少し時間が掛かるタイプだからな。最高スピードで踏み切るには、もう少し下がった方がいいと思った」
驚く。
「七歩下がってもいけるかもな。後はもう少し柔軟性だ」
余りにも的確すぎて、呆気に取られた。
「よっしゃ!一年生もう一回跳ぶぞ!秋月フォロー入ってくれ!」
「あ、はい…」
こんなにも自分の身体が軽いと感じた事はなかった。
こんなにも空が近くに感じた事はなかった。
それくらい、跳躍の質が違った。
一年生の身体を支える腕は、鳥肌が止まらなかった。
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