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一年生の跳躍が三巡した所で休憩となった。
時間は15時を回ったところ。
西から空の色がだんだんと変わり始める。
「秋月さん秋月さん」
水道に向かう途中、隣に柴田が並んだ。
視線を横にやるとキラキラとした瞳でこちらを見ていた。
「俺、背が低いじゃないですか」
自分の身長は四月の測定で178cmを越えていた。
柴田のつむじが見えるということは、自分より20cm近く低いだろうか。
「やっぱり高い方が有利ですよね。秋月さんも緒方さんも高いですし」
緒方さんの身長は185cm近いと聞いた。
高さを競う競技である以上、背は高い方が有利なのかもしれない。
でも
「そうかもしれないけど…柴田は高跳びが好き?」
「はいっ!」
元気な即答が返ってきた。
「俺はもちろん良い記録が出たら嬉しいけど、それよりも跳んでる感覚が好きなんだよ。最高到達点で一瞬重力から解放されて、視界いっぱいに青い空が広がるあの感覚が好きなんだ」
「重力から解放…」
「うん」
空を仰ぐ。
「その解放されたタイミングでバーを越える。空がやたらと近く感じて、最高なんだ。俺はその空が見たくて高跳びを続けてる。背の高い方が有利かもしれないけど、好きでいる事も大切だと思うよ」
ほぉぉ…と柴田は更に目を輝かせた。
「やっぱり秋月さんかっこいいっす!」
嬉しそうに笑う柴田。
可愛いな、と素直に思う。
柴田に向けたこの言葉は、過去の自分へ向けた言葉だった。
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