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空いている席に座る。
両隣に山梨さんと瀬川さんが、食事を乗せたおぼんを落とすようにテーブルに置き座り込んだ。
瀬川さんの唐揚げは、無事に皿に戻されていた。
「今日イチ疲れた…」
「同じく…」
「なんなの…久しぶりにあった親戚のおばちゃんなのか…」
机につっ伏したまま山梨さんが言った。
「まぁ何回もこうやって顔合わせてるからね。親からしたらそんな気持ちなんじゃない?」
はぁ…と二人は同時にため息をついた。
そして同時に両サイドから見つめられた。
「……なんですか」
「秋月はイケメンとか言われて嬉しくないの?」
恨めしそうにそう言い出したのは瀬川さん。
「いや、イケメンとか良く分からないので」
「お前もう少し鏡見ろよ!自分に興味なさすぎだろ!」
山梨さんが吠えた。
「なにあれ、握手の前に手拭く仕草」
「いや、シャワー夕食の後じゃないですか。着替えはしましたけど、一日中外にいたので一応と思って」
「くそ…かっけぇ…」
「酷い目にあった…」
疲れきった顔をした井上さんがフラフラとした足取りで現れた。
「今日イチ疲れた…」
ガチャリと音を立てながら、崩れ落ちるように目の前の席に座り込んだ。
「それさっき俺言った」
「親戚のおばちゃんなのか?」
「それも言った」
はぁ…、と三人揃ってため息をついた。
「お前人気ありすぎ!秋月くんと握手したかったってうるさかったんだけど!主婦が高校生に握手求めるってどういうことだよ…なんなの、マダムキラーなの?」
井上さんが眉間にシワを寄せてじっと見つめてくる。
「いや、マダムだけじゃない。女子高生にも人気だ」
と山梨さん。
「まぁね、通った鼻筋にちょっと気だるげな二重、イケメンですよこの子は」
と瀬川さん。
「だがしかし無表情だ。無愛想だ」
と井上さん。
こちらを見たまま順繰りに言葉を口にする。
これは長くなりそうだ。
「いただきます」
一人食事に手をつける。
「それがいいんじゃねーの。無気力男子ってやつかと思わせ、高跳びに燃やす情熱。高跳び選手のくせに、短距離選手も霞む足の速さ…てかさ、近所のチビが中学で中距離やってたんだけどよ、俺の応援で来た大会で秋月見て、種目高跳びに変えたいとか言い出してさ!俺の応援で来てたのにだぞ?!」
頭を抱えながら再び山梨さんが吠えた。
「もう全世代向けなのかねこの子は」
げんなりとしている瀬川さんの言葉に被せて、ガタンと椅子が倒れそうな勢いで井上さんが立ち上がった。
「お前いい男だな…」
「……はい?」
珍しく真剣な顔を向けられ、ご飯を口に運ぼうとした手を止める。
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