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足が重い。
どこか力のない、聞いたこともない緒方さんの声が耳に残っている。
いつもの元気な笑顔とは、どうやっても結びつかない。
あの声は本当に緒方さんだったのだろうか。
なにかモヤモヤとした重たい物が胸の奥に引っかかってるようで、ひどく煩わしい。
でも、緒方さんの気持ちは分からない。
どうしたらあんな声が出るのか。
どうして自分なんかを、好きだと言うのか。
もうこのまま何も考えずに眠ってしまいたい。
(みんなもう寝てますように…)
しかし願いも虚しく、戻った二年生の部屋ではトランプが持ち出されていた。
敷き詰められた布団の上に、ぐるりと円を描くようにみんなが集まっている。
ため息が漏れた。
「お、戻ってきた。秋月も入って!」
寝転びながらそう声を掛けてきたのは岡田(おかだ)。
中学から同じ学校で、ずっと一緒に陸上を続けてきた友人。
自分が高跳びを始めるまでは一緒に短距離走をやっていた。
岡田は今でも短距離の選手だ。
寝てしまいたいのが本音だが、確実にこれから騒がしくなるであろう室内で寝付ける気もしない。
騒がしさをBGMに寝る努力をするよりは、一緒になってトランプに向き合う方がいいかもしれない。
(気も紛れるかも…)
「いいけど…なにやるの?」
「ババ抜き!三回勝負で、最後に負けたヤツが全員にジュースな」
岡田がトランプを配り始めた。
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