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「このトランプ、岡田が持ってきたの?」
「おう!絶対負けないからな!その綺麗な顔が悔しさで歪むのを楽しみにしてるぜ!」
最初は和気あいあいと雑談混じりに笑顔が溢れていたものの、ジョーカーの移動と共に徐々に心理戦へと変わり始めた。
小芝居を挟む者、それに騙されフリーズする者。
最終戦を迎える頃には、誰もがお互いの顔色を伺い、自分以外みんな正座になっていた。
「秋月よ、今日のお前はいつにも増して無表情だな…こんな時くらいもっと表情変えていいんだぞ?」
「いや、無表情で良かったと心から思ってるとこだから。はい、岡田早く引いて。ジョーカーは真ん中のこれだから、好きなの選んでいいよ」
「お前そんな事言うやつだったっけ?!三年生に揉まれて逞しくなってねぇ?!」
三回戦目に負けたのはお約束通り、言い出しっぺの岡田で、もう一回!と騒ぐも認められず、奢りが決定した。
窓から吹き込む風が強くなった。
勝利に満足した大多数はさっさと布団に潜り込む。
友達と同じ部屋で寝ると言っても、修学旅行と違い、朝から日が暮れるまで身体を動かしていたのだ。
電気の消えたいくらか涼しくなった室内には、すぐに寝息が響き始めた。
隣の布団に入った岡田も最初は寝付けず寝返りを繰り返していたようだが、そのうち寝息が聞こえてきた。
(みんな寝るの早くないか…)
寝付きが悪い訳ではない。
疲れていない訳でもない。
そしてこの部屋にいる誰よりも、布団に潜り込める時を待ち望んでいたはずだった。
でも、眠れなかった。
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