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立ち聞きしてしまった話からは、結局自分の求めていたようなヒントは得られなかった。
逆に自分の首を締めた気しかしない。
何事もなく接してくる緒方さんの本音を聞いてしまった事で、余計に頭の中が混乱してしまった。
それを目的の一つとしてその場を動かずにいた事を後悔する。
身体の向きを変えると布の触れ合う音が耳に響いた。
恋愛とはどうするものなのか。
そもそも恋愛とはなんなのか。
緒方さんは自分とどうしたいのか。
(…まずいことになった)
完璧に頭が冴えてしまった。
目を閉じてはみるものの、眠気なんてものは微塵も感じられない。
身体を起こす。
既に自分の布団にいない者、布団をはいでる者、みんな爆睡しているようだ。
その惨状に気付いたことで、いびきや寝息までがやたらと耳につく。
(風にでも当たれば、少しはすっきりするかもしれない…)
ゆっくりと布団から這い出て、音を立てないように廊下を歩く。
笑い声の響いていた先ほどとは打って変わって、聞こえるのは虫の鳴き声と扇風機の羽音。
三年生の部屋の前に差し掛かり、思わず足が止まる。
電気は消え、話し声も聞こえなかった。
不自然なほどに白く明るい光を放った自動販売機が、暗闇に飲み込まれそうに立っている。
玄関ホールを抜け、静かに鍵を開けて外に出た。
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