アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
55
-
緒方さんもここに自分がいるとは欠片も思っていなかったのだろう。
目を真ん丸に見開いている。
驚き言葉を失っていると、ふっと目を伏せて緒方さんが笑った。
「寝れないんだ?」
「……はい、まぁ…」
「俺もー」
いつもの声色でそう言って、ドカッと地べたに座り込んだ。
「ちょっと寒いな」
「そうですね。海からの風が強いですし」
(一人で泣きに来たわけじゃないよな…?)
夜空を見上げる横顔を、横目でちらりと伺う。
どこかいつもより穏やかに見える顔からは、何を考えているのかは分からない。
でもきっと、緒方さんがここに来た理由は自分なのだろう。
(落ち着け。流されてはいけない)
次に二人になる機会があればと、先程決めたばかりだ。
ただ、思っていたよりもかなり早くその機会が来てしまった。
どう切り出すか、どう順序を組み立てて話しを進めるか。
まとまらない考えを口にするのは苦手なのだ。
とりあえず今日は、このまま部屋に戻ってしまおうか。
しかし今を逃せばまた、緒方さんのマシンガントークでタイミングが掴めなくなるかもしれない。
そのマシンガントークが始まるのは、一秒後かもしれない。
(今言うしかない…)
浅く息を吐き出す。
「あの、緒方さん」
「ん?」
思いの外優しい笑顔を向けられ、思わずたじろぐ。
「あの…この前の話なんですけど…」
「え?どれ?」
聞き返されるも
「告白された話です」
とは言い出せない。
「えっと……」
「あーあれかぁ…」
察してくれたのだろうか。
緒方さんは笑顔のまま夜空を仰いだ。
「ごめんな。困らせたよな」
「いえ…それは別に…」
「いいよ。ちゃんと理由さえ教えてくれたら、それでいい」
本人が言っていた通り、これから自分がどんな答えを出すのか分かっているといった口ぶりだ。
(順番を間違えないように。慎重に)
もう一度浅く息を吐き、ゆっくり口を開く。
「あの…俺、恋愛ってよく分からないです。今まで好きになった人もいないし、告白されても断ってきたし」
「うん」
「だからその…俺と付き合っても恋人らしい事も出来ないというか、そもそも全てにおいてどうしたらいいか分からないというか…」
自分で話しているはずのに、早くも何を話しているのか分からなくなってくる。
「それって恋愛に興味がないってことだよね?」
「まぁ…そうなりますね」
「俺のこと嫌い?気持ち悪いと思った?」
このタイミングでこの問いかけ。
どういう意味だろうか。
既に何か間違えてしまったのだろうか。
「…いえ、全くそんな事は」
「ちょっとここ座って」
そう言って地面をぽんぽんと叩いた。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
56 / 1191