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とりあえず大人しく従う。
昼間の太陽に熱せられたコンクリートは、まだ微かに温かかった。
風に揺れる草むらから、虫の鳴き声がする。
「男同士だからって言われると思った」
「はぁ…まぁ確かにそうですけど」
「秋月ってあんまり他人に興味ないよな。高跳びの為に生きてるって感じ」
「全く興味がない訳じゃないですけど、まぁそうですね」
「男同士ってのは、直接の理由にはならないの?」
「…ならないですね。それ以前の問題なので」
「秋月って変わってるな」
「その言葉はそのままお返しします」
ははっと緒方さんが笑った。
「俺はさ、まぁ前に好きだった人もいるし、彼女もいた。あ、女だったけどな。でも秋月はなんか違うんだよ」
「まぁ俺は男ですからね」
「そうじゃなくて」
んー…と頭をかいた。
「なんでかって言われたらもうわかんないけど、ずっと一緒にいたいと思っちゃったんだよ。秋月と」
「今でもだいぶ一緒にいると思いますけど…」
「うん。でもそうじゃなくてさ。今のままじゃ、俺が卒業したり、どっちかが陸上辞めたら終わっちゃうだろ。それが嫌なの」
(これは…)
いよいよ困った事になった。
部活であろうが学校生活であろうが、必ずなにかのタイミングで、いくつかの別れが来るものだ。
当たり前の事だし、仕方のない事。
嫌がってどうにかなる事ではないし、また新しい環境に慣れるしかない。
中学の卒業式、抱き合って泣いていたクラスメイトが、少し不思議に思えた事を思い出す。
「秋月はさ、絶対手放したくないものってある?高跳び以外で、例えばペットとか、子供の頃からの宝物とか」
「ないですね」
「そっかー。難しい奴だな」
「それもそのままお返しします」
風がざわざわと木を揺らした。
月に雲が掛かったのか、闇が深くなる。
「やっぱりさ、俺と付き合ってよ」
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