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「…はい?」
「秋月が中3の時の夏の記録会に、俺もいたんだよ。あの年はナントカ記念つってさ、創立?開設?まぁよくわかんないけど、何校かの高校が招待されて、うちの学校がたまたま選ばれたんだけど」
自分が緒方さんを見た、あの記録会の事だ。
「最初はただ、すげーキレーに跳ぶ、すげーキレーな顔した、すげー無愛想な奴だなぁって。でもあの時お前、納得のいく記録出せなかったろ?」
じりじりと肌の焼ける感覚を思い出す。
「…はい」
「あんな風に跳ぶくせに、なんかつまんなそうにしてるなって思った。んで俺の番が終わってさ、ホントに何気なく秋月が視界に入ったんだよ。そしたらお前、なんか顔つきが変わってた」
(ああ…)
それはきっと、あなたの跳躍を見たからだ。
「なんで変わったのかとか、そんなのは分からないけど、これから伸びるんだろうなって思って、そしたら春にお前入部してきてさ。思ってたより更に無愛想だし、なんかツッコミ厳しいし」
雲が切れたのだろう。
月がやけに明るく周囲を照らした。
「でもなんつーか、居心地がすげーよくて楽しくて、秋月が他の奴と一緒にいるとモヤモヤしたりして、んで女子に告白されてるの見たら、もうダメだー!って感じだ」
「俺の質問の答えにはなってないですね」
「えっ?!頑張ってみたけどダメ?!」
まさかあの日、緒方さんも自分を視認していたとは驚いた。
”お前秋月って言うのか!”
入部初日、春の日差しを背に、緒方さんは俺に握手を求めながら笑顔でそう言った。
なるほど。
(それであの言い回しだったのか…)
驚いたがしかし、それとはやはり別の問題。
そもそも緒方さんがどうのこうの、という事が問題ではないのだから。
なかなか流れを戻せない。
(何がいけないんだ…)
どうやったら戻せる?
緒方さんの話の進む方向を、なんとか変えなくてはいけない。
「付き合ったらなにするんですか。今までとなにが変わりますか。そんな事も分からない俺なんかと、付き合う意味もないと思うんですけど」
「んー…」
そうだなぁ…と呟きまた顔を空に向けた。
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