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三年生の部屋が近づいた時、その部屋の中からバタバタと騒がしい足音と共に、叫びにも似た大声が向かってきた。
身の危険を感じ、咄嗟に岡田と柴田の腕を引いて壁に背をつける。
直後、ガラッと扉が放たれ、額に黒いペンで
「肉」
と書かれた井上さんが飛び出してきた。
「遅れるっ!メシっ!ヤバイっ!」
そう叫びながらキュッと角度を変えると、自分達に気づきもせず、そのまま水道へと走って行く。
「秋月さん…ありがとうございます…」
呆然とした柴田の声で二人の腕を離す。
「急に引っ張ってごめん」
「いや、サンキューな…思わずお前にときめいたわ…」
岡田も呆然と井上さんの背中を見送りながら、なぜか顔を赤らめて胸に手を当てている。
「てか、井上さんのおでこに肉って書いてなかったか?気のせいかな…」
「肉だけで済んでよかったと思うよ」
「え?」
(やっぱり夢じゃないのか…)
いや、トランプをした後そのまま眠ってしまって、外に出たのは夢かもしれない。
バタバタと、またもや激しい足音が近づいてくる。
時間が数十秒前に巻き戻されたかのような錯覚。
今度は腕を引かずとも、岡田と柴田も背を壁につけた。
「メシっ!ヤバイっ!」
姿を現したのはタオルを握り締めた緒方さんだった。
キュッとブレーキをかけ、立ち止まった。
「おっ!秋月岡田柴田おはよう!」
「おはようございます」
「おはようございます!なんか続けて呼ばれると漫才トリオみたいですね!」
なぜか柴田は嬉しそうだ。
「緒方ぁっ!あと二分だぞっ!あとタオル忘れたから貸してくれ!」
廊下中に井上さんの声が響く。
「はっ!じゃあまた後でな!」
また走り出した。
「すげー…朝から元気…」
岡田は苦笑いをしている。
(緒方さん普通だ…)
やはり夢だったのだ。
「俺達も急ごう」
緒方さんの背中を見送り、また食堂へ向かって歩き出した。
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