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騒がしく走り出した部員達だが、少しすると誰もが黙り込んだ。
裏山までは校門を出て500m程だが、到着する頃には全身から汗が流れ落ちていた。
酸素を求めて呼吸を繰り返すも、熱風となった空気は喉に張り付いて息苦しい。
「渡辺部長、今日の暑さ異常じゃないか?」
シャツで汗を拭いながら、山梨さんが近寄る。
ここ数年、朝のニュースで連日猛暑日だとか、異常気象とか、アナウンサーが口を揃えていた。
「ああ、ちょっと酷いな」
息を切らす部員を、渡辺さんがぐるりと見渡した。
「ここからメニュー別れるぞ。水分こまめに摂れよ。体調悪くなったらすぐ言え」
「うーっす」
「で、とりあえずそれぞれ本数は三分の一に減らす。ロードワークは一往復、ダッシュは10本で一回休憩入れろ」
クイクイっと袖を引かれ視線を移す。
「秋月さん…俺、今部長が神々しく見えます…」
そう言って胸の前で十字架を切り、柴田は目を輝かせた。
額を流れる汗を拭いながら
この子にも緒方さんと井上さんに近いものを感じる
そう思った。
中、長距離組はロードワークへと向かって行った。
坂道を登る集団の背中が、小さく見えなくなる。
「んじゃ三人一組なー、最初のカーブミラーまでだ。井上、小野寺兄弟から行くぞ」
去年と変わらず指定されたミラーまでは150m程。
ただの直線ならまだしも、傾斜のキツい山道。
ダッシュで登りきるのは容易ではない。
よし!
うっす!
と三人が位置につく。
「よーい」
渡辺さんの合図でグッと腰を落とす。
パンという手の打ち合わせる音で走り出す。
「ぅおりゃぁぁぁっ!!」
勢いよく飛び出した井上さんが、気合いと声を全身から発して坂を駆け上がっていく。
「あいつ…なんで俺が本数減らしたか、全くわかってないんだろうな…」
渡辺さんは遠くなっていく後ろ姿と、それに少し遅れて遠くなっていく井上さんの雄叫びを見送ると、はぁ…とため息をつきながら、順番待ちの部員に視線を移した。
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